グローバル化するデフレの先は・・・

先日、東京銀座に「フォーエバー21」がオープンして約1,000人もの人が
行列を作ったそうです。

これで銀座にはスペインの「ZARA」 スウェーデンの「H&M」という世界
のファストファッションの雄に新参の「フォーエバー21」が参入した構図に
なり、ユニクロを含めた戦いは興味深いものとなるでしょう。

特長はそれぞれ若干違いますが「フォーエバー21」のブランド名には、着
る人の誰もが21歳に見えるようにという願いが込められているそうです。
更に「フォーエバー21」の商品は概ね「made in U.S.A」という事が他社と
は違うところです。

しかし、多くのファストファッションが人件費の安い国に生産拠点をシフト
しているのが現状です。アジアでは中国からベトナム、バングラディシュ
へとシフトしています。

それらの国ではどのような変化が起きているのでしょう。

中間所得層の育った中国は今後、消費地として注目されるでしょう。

ベトナムやバングラディシュでは工場で働く人が増え、安定的な収入を
得るでしょう。その後は中間所得層が育ち、消費地の役割を担うでしょ
う。

そして工場はより安い人件費の国を求めて、そこで中間所得層を育成し
ていくことになるでしょう。

グローバル化するデフレの先に貧困の解消と富の普遍化があるのなら
未来は明るいのですが・・・。

ブランドブックが完成しました。

このたびブランドブックという冊子を作りました。これはサロンドグレー
というブランドがどのような考えで靴を作り、お客様にとってどのような
靴でありたいか、社会にとってどのような企業でありたいかをまとめた
ものです。

実は3年程前にもブランドブックを作りましたが、時代の変化に合わせ
て私たちもいろいろと変化してきましたので、このたびリニューアル版
を作ることにしました。

内容は企業メッセージ、私のインタビュー記事(緊張しました・・・)、製造
工程、お客様のインタビュー記事、環境・社会への取り組み、直営店の
ご案内です。

作っていく過程の中で、漠然とした思いが確固たる思いになっていきま
した。

それは日々思っていることを言うだけでなく、印刷物にして配るというこ
との責任の重大さを身にしみたからであると思います。

私たちの思いがうまく伝わってくれれば、これほどうれしいことはありま
せん。

もし、興味があればこのホームページのお問い合わせより御請求くださ
い。又、感想等も書いていただければうれしく思います。

香港レザーフェア

先日、香港のレザーフェアに行ってきました。毎年3月下旬に開かれる香港
のレザーフェアには世界各国からの出展があり、世界のレザーの状況がよく
わかります。

皮革の世界でも中国の勢いはすさまじく、出展ブースの数では一番多かった
と思います。次いでパキスタン、イタリア、インド、ブラジル、トルコといった国
が目立っておりました。

私は日本から来た靴メーカーだと言うと、ほとんど人の反応は以下の様でした。

「昔、日本はたくさん皮革を買っていたけど、今はさっぱりだね。ところであな
たの工場はどこにあるのか?中国かね?」

彼らにとっては日本で靴を作っている事は想像もしていない事なのかも知れ
ません。

香港で売られている靴に目を向けると高級品はイタリア製、中級品はスペイ
ン製、廉価品は中国製かブラジル製でした。香港のお金持ちも最近は中国
本土からの流入組が多く、購買力においても中国の力はすごいと感じざるを
得ませんでした。
 
世界は中国を中心に回り出していると実感いたしました。

しかし、考えてみると中国人の足は日本人とよく似ているのでヨーロッパの木
型よりも日本の木型の方が合っているような気がします。しかも電気製品や食
品は日本製が好まれると聞きます。日本製の靴も中国の人に喜ばれそうな気
がします。実際に私たちの直営店には中国の人がよく買っていきます。

いつかは中国をはじめとしたアジアの人にサロンドグレーの靴をはいてもらい
たいです。

見えざる敵

リーマンショック以降、日本の消費市場が低迷しています。原因は先行
き不安感からくる消費減退、生活防衛的な観点からの低価格商品への
シフトなどが代表的なものではないでしょうか?

もちろんそれらの原因に異論はありません。

しかし、何かそれ以外の原因があるような気がしてなりませんでした。

最近、若い人たちが「クルマを持つことはムダ」「外食はムダ」といった
ことをよく口にします。確かにクルマや外食は経済的に費用がかかるの
は事実です。

又、地方でブランド物のバッグを購入した人が、ご近所にみられるのが
気になるので、わざわざそのブランドの紙袋ではなく普通の紙袋に入れ
て帰ったそうです。

消費することが悪いことであるかのような「嫌消費」のムードが人々を
萎縮させているのではないかと思います。

もちろん、過剰な消費はいけないけれども人生を豊かなものにするため
の適正な消費は当然あってもいいと思うのです。

モノの価値だけではなく、そこに付帯するサービスやその後のライフス
タイルの充実にこそ消費の真髄があるのではないかと思います。

サムスングループ 強さの秘密

サムスングループは韓国最大の企業グループで電子、機械、化学、金融、建設等
あらゆる事業を展開している世界的企業です。

企業の成長過程をみると、その時代にあったものを作って売るという手法で、ニー
ズを読みとる力とマーケティング力に非常にすぐれているのがよくわかります。

先日、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイに高さ828メートルの超高層ビル「ブルジュ
ハリファ」が完成し、世界の注目を集めました。

あまり日本では報道されませんでしたが、その「ブルジュハリファ」の統括施工業
者がサムスングループのサムスン物産だったのです。

サムスン物産は世界3位の超高層ビルであるマレーシアのペトロナスツインタワー
のタワー2を建設した実績があります。(ちなみにタワー1は日本のハザマ)

「ブルジュハリファ」の建設では初の人工衛星による測量や工期短縮のためにさま
ざまな新しい工法が導入されたそうです。又、作業員もさまざまな国から集められた
のでトラブルのないように、毎朝7時のミーティングと毎週木曜日の親睦ビールパー
ティーは欠かさず行われていたそうです。

又、サムスングループには地域専門家制度というおもしろい制度があります。それ
は南米やアフリカの辺境地に社員を1年間遊学させるという制度です。1年間、会社
のお金でその地域に住んで、いろいろと文化とニーズを学びとることを目的としたも
のです。

1年間、その地域で暮らすと人々の生活、習慣、風土、宗教等が生活レベルでよく
理解され、どのような製品が必要とされるのかがよくわかるのです。

その情報を本社に持ち帰り、製品を開発し現地駐在責任者として再度その地に赴
任し、販売にたずさわるという仕組みです。

日本や欧米の企業が行かないような未開の地が多いため、圧倒的なシェアを握る
ことも多いようです。このようにサムスンは海外市場向けの人材を豊富に育成して
います。

文字通りグローバル企業であるサムスンが、日本ではあまり販売実績がありませ
ん。それは日本の家電メーカーが強いのでシェアを奪うことがむずかしいのです。
しかし、携帯電話を中心に攻勢に出てくるのは間違いないと思います。

今後のサムスン製品に注目していきたいです。

東京レザーフェア

第81回東京レザーフェアが1月21日と22日に東京浅草で開催されました。今年
の秋冬物の資材展示会で皮革はもちろんのこと、底やヒールの副資材、お手入
れ用品等、レザー関係の日本最大の展示会です。

毎回行くと思うのですが、いつも人が多くにぎわっているなと感じます。私たち
のような靴を作るメーカーはもちろんのこと、かばん、ベルト、財布のメーカーや
アパレル関係、報道関係や学生さんなど多種多様な方が集まってきています。

特に学生さんの来場が目につきます。レザーを使った学生さんの創作展や、学
生さん達が作った作品のファッションショーなどがあり、創作の発表の場でもあ
るから来場が多いのだと思います。

しかし、以前から気になっていたことがひとつあります。

それはこのようにレザーを使った物作りに興味をもった人たちが、靴メーカーに
ほとんど就職していないという現実です。

理由はお互いの目指すべきものが違うからだと思います。

学生さんは自分の作りたいものを作る、しかし企業は市場の要求するものを作
らなければならない、いわゆる趣味の世界とビジネスの世界の違いです。

しかしこれは、両者が歩み寄ることで解決できると信じています。

そのキーワードはマーケティング発想だと思います。学生さんは創作したモノが
どれくらい市場性があるのかを冷静に分析する視点が必要ですし、企業は学生
さんの創作したモノが従来の市場ではない新しい市場性があるのかどうかを柔
軟に考える必要があると思います。

同じような商品を同じような市場に流していけばやがて停滞していくでしょう。

だから新しい商品を新しい市場に売っていくというチャレンジ精神が最も重要な
共通テーマではないかと思います。

そして、お客様に認知され受け入れられることがプロフェッショナルとしての最大
の評価だと思います。

新年に思うこと

新年あけましておめでとうございます。
お正月休みも終り、仕事モードに日本全体が入って来たような気がします。

当社も心新たな気持ちで2010年度の経営方針とスローガンを一新致しました。

まず、経営方針ですが「人にやさしく 数字にきびしく」というものです。
私は会社経営において雇用を守ること、すなわち従業員やその家族の生活を
守ることが重要であると考えています。

そのためには会社は利益を上げなければいけません。利益の上がってない会
社は雇用を守ることはできません。だから会社の掲げる数値目標に一致団結
して努力しなければならないと考えています。

次に会社スローガンですが、二つありまして一つめは「明るく 楽しく 誠実に!」
です。これは仕事をする姿勢のことです。仕事は苦しいこと、つらいことも多いで
す。しかし心の持ち方で、明るく楽しく仕事をしていくことができると思います。
又、お客様に対しては常に誠実に対応していきたいと思っております。

二つめは「届けよう まごころ込めた 一足を!」です。靴は多数の職人さんたち
や流通に携わる人たち、そして販売員さんの手を経てお客様の元に届きます。
みんながその一足にまごころを込めて、高品質な商品をお客様に届けようとい
う気持ちを大事にしたいと思っています。

毎朝、私たちはこの二つのスローガンを唱和致します。仕事に対する姿勢と
お客様に対する気持ちを忘れないために。

H&Mとイケア

ファッション製造小売業の「H&M」(へネス・アンド・マウリッツ)とホーム
ファッション企業の「イケア」が日本上陸後、順調に売上を伸ばしています。

日本に進出する以前は日本での知名度はあまりなかったと思いますが、
H&Mが年商1兆2500億円を、イケアは3兆円を世界相手に売り上げる
文字通りグローバル企業であります。

その2社は共通する点がとても多いです。

まず第一に、共に人口900万人ほどの北欧のスウェーデン企業であると
いうことです。実はスウェーデンには世界に進出し成功している企業がと
ても多いらしく、その理由は自国のマーケットが小さいので、世界市場を
見据える考え方が定着しているのが主な要因であると思われます。

米・英・仏などの大手企業は自国のマーケットが巨大であるため、自社の
やり方を押し付ける手法が目立ち、失敗するケースが多いようです。

第二の共通点はSPA(製造小売業)でありながら自前の工場を持たない
ファブレス企業であるという点です。両社はローコストを実現するために世
界中に協力工場を持ち、最適生産を実現しているのです。

そして最も興味深い共通点は、物流システムの構築に最大の関心を払っ
ているという点です。まず、物流網の整備をして出店計画を立てるという考
え方で発想がとてもグローバルだと思います。両社ともに世界各所からの
調達や国際ハブ物流によるコストマネジメントに長けており、いかに安くス
ムーズに運べるかを常に商売の基本としているようです。

両社を迎え撃つのは日本の「ユニクロ」と「ニトリ」です。今後もいろいろな
分野でのグローバル企業が日本市場に参入してきます。又、逆に日本企
業も世界に打って出ていきます。限られた市場の中、全員が勝者になるこ
とはあり得ません。変化に対応し、知恵と工夫を駆使した者が勝ち残れる
のではないかと考えています。

雇用を守る

11月22日 私たち株式会社サロンドグレーは創立21周年を迎えま
した。これもひとえにお客様、仕入先の皆さん、そして社員さんや職
人さんのおかげであると深く感謝しております。 

常々、恩返しができればと思っておりますが、皆さんにとって私が今
すべき最善のことは会社を維持、成長させることではないかと思って
います。

私の尊敬する経営者の松下幸之助さんが、経営者にとって一番大切
なことは、「雇用を守る」ことであると言っておられました。利益を上げ
ることよりもまず「雇用を守る」すなわち信頼してついて来てくれている
社員の生活を守ることが経営者にとって一番重要であると言っておら
れました。

この言葉は今の時代に胸にしみます。

「安心して働ける」という事がいかに大事なことか、「社員の生活を守
る」という事がいかに大切なことか、を痛切に感じ身が引き締まる思い
です。

そのために会社は利益を上げなければいけないし、お客様に支持さ
れる靴を作り続けなければいけないのだと思います。

「違い」がわかるということ

最近、いろいろなモノが安くなってきています。

衣料品や食べ物等、日々の生活に必要不可欠なモノを中心に様々な
人達の努力のおかけで品質のレベルをあまり落とさずに低価格な商
品が実現しています。

とてもよいことだと思います。

しかし、全てがそうであることは将来的にみて、必ずしもよいことだけ
であるとは思いません。

若い人達の行動をみていると「損したくない」「だまされたくない」という
意識が強く、チャレンジ精神に欠けた保守的な姿勢があるように思い
ます。

だから安くて、それ相応の商品になれ親しんでしまい、高いけれども
「違い」がはっきりとある商品にはあまり手を出そうとしません。

そうなってしまうと上質なモノを体感しないので、品質の良し悪しを判
断することができなくなってしまい、同質的なモノの中から価格基準で
選ぶということになってしまいます。

それはどういった現象を引き起こすでしょう?

今の20~30代の人達が日本の消費市場の主役におどりでる20年
後に現在ある「高級品」「嗜好品」市場が危機的に縮小してしまうので
はないかと心配です。

「違い」がわかるということはモノの本質を知るということで、広告、宣伝
にまどわされたり、一過性のブームにだまされることのない賢い消費者
になる一番の重要ポイントであると思います。