場違いな二人

先日、旧友のK氏から久しぶりに電話があり、ディナーの無料チケットがあるので行かな
いかという誘いをうけました。

有効期限が5月末日までなので、お互いのスケジュールの合う日を設定し、行くことにな
りました。

場所は神戸の北野、中庭の美しいおしゃれなレストラン。

周りのお客さんは全てカップルで、男二人は完全に浮いています。

その時、昔のある光景がフラッシュバックしました。

かれこれ二十数年前の事です。

そのK氏からボトルキープの期限がもうすぐ切れるので、飲みに行かないかと誘われまし
た。

場所は梅田の高層ビルのレストランパブ(この言い方も古い)

予約なしで行ってみると、席は空いているがメニューは二人用のスペシャルディナーセット
のみしかやってないという。

ボトルキープしたお酒を飲むのが目的だったので、仕方なくそれをオーダーしました。

それが間違いの始まりでした。

店内はいつもより暗く、各テーブルにキャンドルの灯りがともっています。

周りのお客さんは全てカップルで、男二人は完全に浮いていました。

その日は2月14日、バレンタインデーナイトだったのです。

運ばれてくる料理は「二人のために」ハートや星形をふんだんに使ったロマンティックな料
理の数々。

完全にアウェーな私達に衝撃の一言が・・・

「今日の二人を記念して、ポラロイドフォトサービスをしています」

ぎこちない男二人の笑顔が写真におさめられました。

そんな日に入った私達が悪いのか、店のマニュアルすぎる対応が悪いのか、わかりませ
んが若い日の思い出の1コマです。

今後、K氏からの誘いは居酒屋にしようと心に決めました。

私が靴を愛するワケ

靴と女性の魅惑の関係に迫る世界初のドキュメンタリー映画が日本で上映されています。

そのタイトルはズバリ 「私が靴を愛するワケ」

この作品は、50センチ以上もの高さがあったルネサンス期の靴から、今日のピンヒールま
での歴史を追いながら靴を通じて女性と靴の歴史をひも解いていく内容です。

見どころは、セレブやシューズデザイナー達が語る靴の魅力。

その一片をご紹介しましょう。

「靴を見れば、今の私の気分が分かるわ」

「靴は私というものを表現するのに欠かせないものよ」

「ピンヒールをはいた瞬間、人は女になるんです」

垣間見えてくるのは、女性たちの美しくなりたい、強くなりたい、新しい自分になりたいと
いう一途な思いです。

フランスのヴォーグ誌の読者の8割は靴中毒者で、小型車1台分ぐらいのお金を靴につぎ
込んでいるそうです。

なぜ女性たちは靴に欲望と感情を刺激されるのでしょうか?

そのヒントがこの映画にあるような気がします。

靴好きには必見の映画です。

盆栽という小宇宙

先日、盆栽展に行く機会がありました。

そこには、数々の盆栽展で受賞した盆栽が一堂に展示されておりました。

所有者が丹精込めて手入れした銘木の数々をみていると、心が洗われるようでした。

盆栽というと松を思い起こしますが、松以外にも花の咲く梅や桜、実のなるカリン、サクラ
ンボ、雑木のケヤキ、モミジ等、様々な種類があります。

盆栽の魅力は、野外でみられる大木の姿を鉢の上に縮尺して再現することにより、小宇
宙を作り出すことだと思います。
 
実際によくみてみると、木をそのまま小さくしたミニチュア版のようなもので、とてもかわい
いです。

自分でも育ててみようと思い、近くの盆栽専門店に行きました。

たくさんの中から、心引かれる一つの盆栽がありました。

マツの仲間の糸魚川シンパクという種類で、高さが20cm以下の小品盆栽です。

でもこんなに小さくても樹齢20年以上で、盆栽の世界では若い方です。

立派な盆栽は100年以上経っているものも多く、400年というものもありました。

そのような盆栽は一人で育てられないので、引き継がれて育てられているということになり
ます。

盆栽愛好家であった三代将軍 徳川家光の盆栽が宮内庁で育てられているという話は、歴
史の重みを感じざるを得ません。

人間より長い時間を生きる盆栽。

世界中の人々を魅了する理由が少しわかった気がします。

「所有」から「シェア」へ

「所有」することがステータスであったバブル世代。

「シェア」することに抵抗のない若い世代。

上記2つの世代が消費市場の主役を交代する時にどのような変化が起きるのか、誰も想
像しえないのではないかと思います。

アイテム別に少しづつ変化が起きているようです。

高級ブランド品のレンタルサービスは、20代~30代の若い女性に人気が高いそうです。

パーティドレスを中心にバッグや靴、アクセサリーなどのアイテムを取り揃えているレンタ
ルサービスは、セットで約1万円前後の料金設定だそうです。

結婚式などにお呼ばれする機会が多いけれど、高級ブランド品を何点も購入することはた
めらわれる層に需要は高いような気がします。

車にも「シェア」の流れがあるそうです。

かつては車を所有することが男のロマンの象徴であったのですが、今の若い世代にとって
維持費が高い割に利用機会が少ないので、コストパフォーマンスの悪いアイテムと映って
いるのかも知れません。

必要な時だけ利用できればいいという若者の考えに呼応するように、カーシェアリングとい
うビジネスが増えているようです。

利用者の満足度も高く、コンビニのように近くにカーシェアリングがあるかどうかを引越し先
の重要なポイントとして考える人も多いようです。

「所有」から「シェア」に完全にシフトしていくかどうかはわかりませんが、メーカー側は好意
的にこの流れをみています。

「シェア」というトライアルで使っていただくことにより、購買につながるとみているようです。

レンタルビデオが浸透していったように、シェアビジネスがどのようなアイテムで開花してい
くのか注目していきたいです。

職人さんの引退

先日、弊社の底付職人さんが引退しました。

弊社に勤めて20年以上、職人歴は60年以上という大ベテランで、年齢は80歳を超えてい
たと思います。

その人はそんな高齢とは思えないほどに元気でハツラツとしていて、ゴルフやカラオケを
趣味に、まさに人生を楽しんでいるといった感じの人でした。

職人としての腕も確かで、後輩の面倒見もよく、人として尊敬できる部分がたくさんありま
した。

その職人さんが4月末日で引退したいという申し出がありました。

私たちにとっては突然のようであっても、その職人さんにとってはいずれ引退の日が来る
と覚悟をしていて、それがたまたまその日であったのかも知れません。

職人の世界はサラリーマンのように定年がある世界ではないので、自分の身体が動く限
り、自分の腕が通用する限り働くことが可能です。

現実に職人さんが引退されるのは、身体を壊して働けなくなってしまうことが大半です。

今回のように余力を残して、自ら決めた日まできっちりと勤め上げて、スパッと引退すると
いうことは非常にまれなケースです。

その職人さんのいない職場をみて心に誓いました。

残してくれた功績に恥じないよう、私たちは技術を継承し、切磋琢磨していかなければい
けないと。