豚まん

関西では肉といえば「牛肉」を指し、豚肉は豚の名で呼びます。

よって牛肉入りのうどんは肉うどんで、豚肉と玉子入りのお好み焼きは豚玉、豚肉が入った中華まんは「豚まん」と呼びます。

豚まんは大正4年、神戸・南京町にある中華料理店が天津名物の「包子(パオツー)」を「豚まんじゅう」(後、豚まん)の名で売り出したのが最初です。

しかし最近は「豚まん」ではなく「肉まん」と呼ばれるのが一般的になってきています。

沖縄の人が関西で初めて豚まんを目にして「沖縄で食べていた肉まんとそっくりなのに名前が違う」とショックを受けていたそうです。

辞書で肉は牛、豚、羊、馬等の肉を指し、特に魚以外とありますので「豚まん」「肉まん」でもいいという解釈になります。

ただ神戸・南京町には牛肉入りの「神戸牛肉まん」を販売する店があり、豚肉ではなく牛肉であることをアピールしています。

又、吉本新喜劇でも「豚まんみたいな顔」というつっこみはありますが、「肉まんみたいな顔」とは言わないと思います。

たかが豚まんですがされど豚まん。

関西人にとって豚まんは豚まん以外の呼び方はなぜかしっくりこないのです。

佐竹本三十六歌仙絵

「三十六歌仙」とは平安時代中期の歌人・学者の藤原公任が飛鳥から平安時代のすぐれた歌詠みから選んだ柿本人麻呂・大伴家持・小野小町など三十六人のスター歌人。

「佐竹本三十六歌仙絵」は鎌倉時代、13世紀に作られた絵巻物です。縦37㎝ほどの大ぶりの料紙に一人ずつ歌仙の名前と和歌を記し、肖像画(歌仙絵) を描いたものです。

「佐竹本」の名称は江戸時代から幕末に入手したとみられる旧秋田藩主・佐竹侯爵家にちなんでつけられたものです。

その「佐竹本三十六歌仙絵」は激動の運命をたどるのです。

佐竹家は明治維新で境遇が大きく変わり、売却することになります。

あまりに高額であることから、実業家 益田鈍翁から驚くべきアイデアが実行されます。

それは二巻からなる巻物を分割して財界人などに購入してもらうというアイデアです。当時、日本の宝物が海外へ流出することが多く、それを防ぐ目的もあったようです。

歌仙絵を入手した人々はそれぞれに凝った表装を施して大切に持っていました。しかしその後、戦争や財閥解体、高度成長や不況などの荒波の中でほとんどの歌仙絵の持ち主が替わっていきました。

2019年は「佐竹本三十六歌仙絵」が分割されてちょうど100年を迎えます。

これを機に離れ離れになった断簡37件のうち31件が集まった特別展「流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美」が京都国立博物館で開催されています。

興味のある方は是非ご覧下さい。

メンズ館の変化

伊勢丹新宿本店メンズ館がオープンしたのは2003年。

その後、各百貨店で次々とメンズ館が作られ、ブームとなりました。

伊勢丹メンズ館開業時は女性の比率が70%を超えていました。それは父の日やバレンタインデー、クリスマスなどのギフト需要が大きく代理購買が中心であったからです。

しかし年々ギフト需要は低下します。バレンタインも女性は自分や友人のために買うケースが増えたためです。

2018年には男女の比率はほぼ半々となりました。

次の変化は女性の実需が増え始めたのです。

少し大きめの服を着るのがトレンドになり、女性が男性向けの小さいサイズの服を買うケースが増加したのです。

SNSで女性が女性向けに男性モノの魅力を発信してヒットするケースもあるといいます。

デザインに大差がない場合、性別を分けた売り方に何のメリットがあるだろうかと考えさせられます。

そこにはサイズだけの違いということになります。

実際、海外ブランドからは「なぜいまだにメンズとウィメンズを分けているのか」と疑問の声が上っています。

数年後、ファッション商品はサイズバリエーションが豊富なユニセックス商品が主流になるのではないでしょうか?

地味ハロウィン

年々盛り上りをみせていた日本のハロウィンイベントですが、今年は少し方向性が変わってきました。

渋谷は昨年の騒動があったので路上や公園での飲酒が禁止となり、警察の監視も厳しくなったので人は多いがそれほど盛り上りはなかったようです。

そのかわりに年々盛り上ってきているのが「地味ハロウィン」です。

「地味ハロウィン」とは、日常どこかで見かけた地味でリアルな仮装をすることです。

昨年は渋谷含め全国3カ所で開かれていましたが、今年は北海道旭川市から台湾台北市まで国内外で計20ヶ所で開催されました。

「会社帰りで銭湯に行く人」

「コインランドリーで洗濯が終わるのを待つ一人暮らしの大学生」

「オフィスに待ち構える生保レディ」等

独創的でどこかシュールな笑いがジワジワときます。

欧米のバカ騒ぎするパーティではなく、日本人は地味で穏やかでシュールなパーティの方が実は好きなのかも知れません。

来年の地味ハロウィンが楽しみです。

前橋汀子

前橋汀子は日本を代表する国際的ヴァイオリン奏者で、その演奏の優雅さは多くの聴衆を魅了してやみません。

これまでにベルリンフィルやロイヤルフィルなどの名楽団で演奏し、国内外で高い評価を受けています。

1988年に最初のバッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとバルティータ」全曲を録音しています。

それはとても優れた演奏でありました。

それからおよそ30年。前橋汀子自身が以前の録音を振り返って「未熟」と断じ、全6曲の再録音に踏み切ったのが2017年。

30年間の円熟した経験を経て「是非もう一度」と取りかかった再度の「無伴奏」の全曲録音は2019年8月に発表されました。

世界を代表するヴァイオリニストが過去の自分の演奏を未熟と断じて再演奏する。プロのアーティストとしてのプライドを感じます。

その無伴奏を生で聴く機会があったので行ってきました。

広いステージに彼女のヴァイオリンのみ。

彼女の緩急あふれる演奏。その中で何度も高音と低音を同時に弾く重音奏法があり、一挺のヴァイオリンのみということを忘れてしまうほどでした。

前半75分、後半75分と彼女は立ったまま一人で弾き続けました。

75歳とは思えない体力、気力。

そのステージは神々しいオーラにつつまれた気迫にあふれるものであり、最高の演奏に立ち会えた瞬間であったように思います。