通り過ぎてゆくもの

チェッカーズの藤井フミヤさんは、私より2歳上で、同じ時代を生きた同世代です。
そのフミヤさんのエッセイを偶然読む機会があり、とても共感した部分がありました。
内容は、要約すると以下の通りです。
「昔は車とか洋服、ブランド物とか物質的なモノが欲しいと思っていたけど、今は通り過
ぎてゆくものに興味がそそられる。食べ物、楽しい時間、旅とか・・・」
ほんの数行だったのですが、時代の変化により変容していったライフスタイルをうまく表
しているなと感じました。
通り過ぎてゆくものは後に残りません。
ただ、いい記憶として心に残るだけです。
最近、藤井フミヤさんの活動はあまり知らないのですが、エッセイを読む限りではアート
にも造詣が深いようです。
肩の力を入れずにナチュラルに生きている印象がして、こうありたいなと思う人の一人で
した。

リネアペッレ2014

先日、イタリア・リネアペッレ展示会主催の2015/16年秋冬イタリアンレザー最新トレンド
セミナーに行ってきました。
リネアペッレ展示会とは、イタリアで毎年開催される皮革を中心とした資材展で、全世界
からデザイナーやバイヤーが訪れます。
イタリアの皮革は世界のトップレベルであり、欧州での生産の65%、世界での生産の17
%を占めています。
皮革を使う業界は、私たち靴メーカーの他にバッグ、衣類、家具、自動車等、様々であり
ます。
その中で特に成長が著しいのが、自動車産業で革張りシートの需要が伸びています。
中国を中心とした富裕層は革張りシートを好むらしく、10年位先まで皮革の買い付けが行
われており、相場価格の押し上げ要因になっています。
今回のセミナーは、光をテーマとしており、その色彩の洗練さ、加工技術の高さ、発想の
独創性等は、さすがイタリアと思わせるものばかりでした。
最近のもの作りが、流行トレンドをいかに早く、安く、大量に作るかという方向にシフトして
いるように感じるのですが、高くてもいいものをしっかりと作っていくもの作りに回帰してい
くべきだと感じています。
そのようなことを再認識させられたトレンドセミナーでした。

ベルサイユのばら

先日、チケットをいただいたので、はじめて宝塚歌劇を観ました。
今年は宝塚歌劇創立100周年で、又、「ベルサイユのばら」も40周年という記念すべき年
です。
観客の大半は女性で、想像以上に年齢層の幅は広かったです。
一番驚いたことは、ジャニーズの親衛隊のように、ひいきの出演者のファングループがい
て、おそろいのハッピや応援の仕方が決まっているということです。
そこには一定のルールがあるのか、他の人には迷惑がかからないように配慮しているよ
うにみえ、体育会系の規律みたいなものが感じられ好印象でした。
観劇の感想ですが、期待通りの華やかな舞台で大変おもしろかったです。
特にオスカル役の凰稀かなめさんは、オスカル役がピッタリで、これぞ私の想像していた
オスカルでした。
実は昔、家に姉の池田理代子原作の漫画 「ベルサイユのばら」 が全巻あり、少年時代
に読みふけっていました。
そのせいでストーリーは完全に頭に入っており、イメージもふくらんでいたのです。
その世界観を表現するために、宝塚の人たちの猛レッスンをはじめとする並々ならぬ努
力に尊敬の念を禁じ得ません。

超絶技巧!

先日、三井記念美術館で開催している 「超絶技巧!明治工芸の粋-村田コレクション
一挙公開-」 という展覧会に行ってきました。
今まで工芸品というジャンルにはあまり興味を持っていなかったのですが、技術の高さ、
独創性、職人の心意気等、すべてにおいて度肝を抜かれるくらい感動し、今年観た展
覧会ではまちがいなくナンバーワンだと思います。
明治時代の工芸品は、ほとんどが海外輸出用であったため、日本にはほとんど残って
いません。
その当時から海外の評価は高かったのですが、名品のほとんどが海外のコレクターが
所有していたので、日本ではあまり注目されませんでした。
1980年代後半、村田理如氏 (村田製作所創業者の子) が海外で明治の工芸品に出会
い、この明治工芸の驚くべき達成を日本人に知らしめたいという熱意を持って収集をはじ
めたそうです。
村田氏は四半世紀ほどの間にオークション等を通じて、それらを買い戻し、現在約1万点
を超す質の高いコレクションになり、京都の清水三年坂美術館で常設展示しています。
そこで、なぜ明治の美術品が素晴しいのかという疑問がうかんできます。
江戸時代は戦もなく平和な時代でした。大名たちはお抱えの職人たちに調度品や武具
を作らせていましたが、実用的なものから装飾的なものになっていき、芸術の域に達した
のではないかと思います。
その後、明治維新を経て失業対策と外貨獲得のため、超絶技巧を生かした輸出用工芸
品作りにシフトしていったと思われます。
そこには大量生産にはない根気のいる精巧さと独創的なアイデア、繊細さが絶対必要で
あり、当時の日本人職人のプライドをひしひしと感じます。
美術、芸術に興味のない人でも、これらの作品を目の前にすれば理屈ぬきで「すごい!」
と感じると思うので、機会があれば是非、実物をみていただきたいです。