「大阪都構想」がもたらしたもの

「大阪都構想」とは、大阪市を廃止して5つの特別区の新設を柱とした構想です。
5月17日に大阪市民を対象とした、前代未聞の大規模な住民投票が開かれ、反対70万
5585票、賛成 69万4844票とわずか1万票の僅差で否決されました。
投票率も67%で、3分の2の市民が投票した一大関心事でした。
選挙当日まで賛成、反対の陣営が声をからしてアピールしていました。
私を含めた大阪市民の人たちは、大いに悩んだと思います。
なぜなら、両陣営の話を聞けば聞くほど両極端だからです。
大阪都になると「無駄を省ける部分」と「新たな負担」があるわけなのですが、両陣営の試
算があまりに違うのです。
データというものは、抽出の仕方、加工の仕方によって見え方が大きく変わります。
あくまでも結論(賛成もしくは反対)にもっていくための試算にすぎないのです。
正直どちらを信じたらいいのかわからないけれど、棄権はしたくないという市民感情の表
れがこのような僅差での決着になったのではないかと思います。
選挙前、選挙後でも大阪都構想の話はよく話題にのぼり、政治論議が活発になったこと
は間違いありません。
私たちの住んでいる街には、こんな問題があったのかと気づかせてくれたのは橋下徹市
長だと思います。
長いものには巻かれろ式で、無関心だった大阪の人たちを考える市民、疑問を抱く市民
に育てたことが最大の成果ではないかと考えます。

教えてもらっていない

「その事はわかりません。教えてもらっていないので・・・」
最近の若い人は当然のように言います。
周りの人はア然となり、心の中で叫びます。
「そんな事は常識で、教えてもらうものではない」 と。
このような光景はあまりに日常茶飯事で、驚くことも少なくなりましたが、最近腰が抜ける
くらい驚くべき話を聞きました。
偏差値の高い東京の某有名私立大学の教授が言っていました。
「信じられない事だが、学生の7割は70年前の戦争の事を知らない。詳しい内容ではなく、
どこの国の戦いで、どこの国が勝ったのかを知らない」
理由は「教えてもらっていないので」
事実、近現代史は受験には出題されないので、高校の授業ではほとんど教えないのだそ
うです。
反面、某芸術系の大学では、ほとんどの学生が戦争の事を知っているらしいのです。
それは映画、小説、漫画等を通じて学んだそうです。
教えてもらっていないけれど、自らの興味分野の中で学んでいったのです。
今年は戦後70年、近隣諸国の間で歴史観の違いが注目されています。
マスコミの過熱さの割に、若い人たちの無関心さが目立つ感じがする本当の理由は、「何
の事か全然わからない」からではないかと思います。

火花

お笑い芸人 ピース又吉さんのベストセラー小説「火花」を読みました。
なぜこの作品が「文学界」を史上初の大増刷に導いたのかと興味を持っていたのです
が、読んでみて深いナゾが解けたような気がしました。
人見知りの芸人・徳永と天才肌の芸人・神谷の友情物語であるのですが、売れない芸
人達の空気感や無力感が実によく感じられました。
筆者のていねいな文章、細部にわたる鋭い観察眼、心理描写の繊細さには驚くべきも
のがあり、私の頭の中で描写されている情景がリアルに再現されていました。
この人は、文章の天才だと思います。
又吉さんによると、登場人物に特定のモデルはなく、複数の芸人仲間を参考にしたそ
うです。
もちろん自伝小説でもないそうです。
映画化の話も早々に出ているそうですが、読者の世界観と映像のギャップを生むので
はないかと心配しています。
キャスト選定も悩むところです。
ヒットを狙う商業主義に走るのか、小説の世界観を忠実に再現するのか、注目していき
たいです。

ユーズド・イン・ジャパン

訪日外国人が日本に来て最も驚くことの一つに、街にゴミが落ちていなくてキレイという
のがあります。
日本人には子供の頃から掃除の習慣があります。
ほとんどの学校で、全員もしくは掃除当番の人が教室や廊下を掃除します。
実は世界的には珍しいことのようです。
自らが掃除をしなければいけないので、できるだけゴミを落とさず、きれいに使おうと無
意識のうちにしているのだと思います。
海外では学校清掃の業者が担当しているケースが多く、きれいに使おうという意識が
働かないかもしれません。
その習慣からか、日本人は「物を粗末に扱わず、大切に使う」という意識が根付いてい
るような気がします。
世界で高評価を受けているメイド・イン・ジャパンとともに、日本の中古品ユーズド・イン・
ジャパンも非常に人気が高いのだそうです。
中古車はもとより、オフィス家具や衣類、鉄道車両まで海を渡り、新たな活躍の場を得
ています。
新品ほど高価格ではなく、中古でも十分使える品質であることが人気の理由です。
日本人の気質が生み出した究極のエコサイクル。
今後は様々な分野に広がっていくような気がします。

コインロッカーの悲劇

先日、東京ビックサイトで行われていた展示会に行ってきました。
大きな展示会に行った時は、できるだけ多くのモノをみるために荷物を最小限にして、身
軽で回るようにしています。
私のような人が多いのか、コインロッカーは充実しています。
しかしながら、スーツケースを入れられる大きめのコインロッカーは競争率は高いのです。
運よく、近くにピッタシサイズのコインロッカーをみつけ、預けることにしました。
「よし、携帯と名刺も持ったし、これで大丈夫だな」と心でつぶやき500円を投入し、鍵をか
けました。
その瞬間、「あっ、招待券持ってない・・・コインロッカーに入れてしまった」と気づいたので
す。
ロッカーの前で苦悶すること約1分。
受付で名刺を渡して、招待券を再発行してもらおうと会場の方へ向かいました。
「そういえば、ロッカーの中に入れたのは、会場内でラウンジが使えるVIP招待券だった
な・・・。そもそも受付に時間がかかったら嫌だな・・・」と歩きながら苦悶すること約4分。
やっぱり引き返してロッカーを開けようと決心し、5分前に入れたばかりのコインロッカー
を泣きながら開けました。
VIP招待券を取り出し、もう二度とこんな過ちはしないと心に誓い、500円を投入し、再施
錠しました。
すると、前のベンチで座っていたおじさんと目が合いました。その表情は憐れみに満ちて
いました。
そうです・・・ 私の5分間のコインロッカーの悲劇を見ていたのです。
そのおじさんの憐れみと小さなエールを背中に感じながら、足早に会場へ向かいました。