ニッポンで生きていく

スウェーデンの世界最大の家具ショップ 「イケア(IKEA)」 が日本で苦戦していると言わ
れています。

イケアは洗練されたデザインと低価格を両立させ、そのビジネスモデルは全世界で成功
をおさめています。

しかし、日本では雑貨類はよく売れるのに、肝心の家具の売上がイマイチだそうです。

徹底したリサーチの結果、イケアの家具は安くてデザインもいいけれど大きすぎるという
印象を持たれていることがわかりました。

イケアは日本の平均的なマンションの間取りをそのまま店内に再現し、そこに家具付の
部屋を再現させました。

するとお客様の反応は「ちょうど我が家もこのくらいだからピッタリだ」と大きすぎるという
印象はほとんどなかったそうです。全く同じ家具なのにです。

一方、アメリカのハンバーガーチェーン「ウェンディーズ」が日本へ再進出することになり
ました。

「ウェンディーズ」は作り置きをしないオーダーメイドシステムで、新鮮な野菜たっぷりの
作りたてハンバーガーが人気のチェーンです。

その「ウェンディーズ」が12月27日(予定)に東京青山に再進出1号店をオープンさせます。

過去の失敗を修正し、日本市場に合うように満を持してやってきます。

家具の「イケア」、ハンバーガーの「ウェンディーズ」共に日本の消費者の目は世界で一
番厳しいと思っています。だからそこで認められたい、そこで闘う価値があるのだと言いま
す。

有力な外資チェーンがニッポンで生きていくことを覚悟し、日本市場をにらみ、日本風にカ
スタマイズしてやってくることは日本のライバルにとってもかなりの脅威であると思います。

私たちの靴業界も有力な外資が日本風にカスタマイズして、いつやってくるかもしれませ
ん。その日に備えて、日々努力していかなければならないと思います。

テクノロジーは雇用を破壊しているのか

この20年の時代の流れはすごいと思います。

1980年代にヒットしていたカルロス・トシキという日系ブラジル人歌手が、久しぶりに日
本に来て驚いたことが、もう日本人は電車の切符を買わないのですねということでした。

確かに今は、ほとんどの人がICカードで自動改札を通過しています。

私達はもう慣れ親しんだ光景であるのですが、久しぶりに来た人には驚くべき光景か
もしれません。

ICカードの登場で、小銭を用意して切符を買う必要がないので手間が省けました。しか
し、検札する駅員や大量の切符を発行する業務に携わっていた人の雇用は要らなくな
りました。

又、デジタルカメラの登場で、写真現像に携わっていた多くの雇用は激減しています。

テクノロジーが進化すればするぼど生活は便利になるでしょう。しかしその反面、ある
分野の雇用はどんどん減っているのも事実です。なぜなら、人がやっていることを機械
がより正確に効率的にこなしてしまうからです。

文明は人類を重労働から解放してきました。

過酷な農作業は牛や馬を経て、近代的な農機具にとってかわっています。

暖をとる薪集めや生活に必要な水くみも、先進国では必要なくなっています。

あらゆる産業の中で以前まで必要であった「人手」がいらなくなってきている状況が世
界的規模で起きているのではないかと思います。

雇用は人の営みを支え、消費に回っていきます。雇用が経済を支えているといっても
過言ではないでしょう。

テクノロジーのますますの進化が、普通の人の職を奪いとってしまうのではないかと心
配しています。

希望的観測のわな

先日、作家の浅田次郎さんの講演を聞く機会がありました。

浅田次郎さんは直木賞を受賞した「鉄道員」(ぽっぽや)をはじめ、多数著書を執筆し、人
情味あふれる作風は多くのファンから愛されています。

題材は、現代からさかのぼること150年間の話に限定しており、日本のみならず中国を
舞台にした小説も数多いです。

その浅田さんが日本のメンタリティは希望的観測に基づくものが多いと言っていました。

問題が起こると、これ以上に悪くなることはないだろうという根拠のない前提からはじま
り、「こうなってほしいな」「多分こうなるだろう」「きっとこうなる」「こうなるに違いない」と
論議を深めるたびに変化していくというのです。

そこには、責任をとりたくない気持ちや変化に対応することに億劫な気持ちに支配され
つつある人間の内面があり、安易に希望的観測にのってしまいがちな気質が日本人に
はあるというのです。

それは、常に隣国からの侵略におびえて、最悪のシナリオを現実的なものとしてイメー
ジして生きてきた中国大陸や、ヨーロッパの人々のメンタリティとは大きな差があるとい
うのです。

歴史的にみても、日本は実質的な他国の侵略を受けていない大変珍しい国であるとい
えます。

そこで生まれ育った日本人は、ある意味平和慣れしています。

それが悪いとは思いませんが、問題に対処する際にはくれぐれも安易な希望的観測に
のらないように注意しなければならないと思います。

希望ある会社へ

いつもこの時期は、来年の事業計画を立てる時期です。

今年の一年を振り返り、予定通りできたこと、できなかったことを検証し、来年の計画を立
てます。

特に今年は大震災があったので、予定通りにいかなかったことがたくさんあったと思いま
す。しかしながら、人との助けあい、絆など忘れかけていた価値観を思い起こさせ、痛切
に感じさせてくれる一年でもあったと思います。

普通に働くこと、食事をすること、入浴すること、ベッドで眠ることが幸せなことであること
をわからせてくれました。

そして希望をもって、一歩踏みだすことがいかに大切であるかを学びました。

今、日本をはじめ世界をおおっている閉塞感の原因は未来への希望がみえず、先行き
不安感がつのり、人々の活力が低下していることが主因ではないかと思います。

経済停滞、年金問題、雇用問題と、どれをとっても希望を見出すことが難しいかもしれま
せん。

そういう時だからこそ、希望をもって一歩踏み出していくことが大事だと思います。

私たちは来年度、増産体制にシフトします。

私たちの会社を「希望ある会社」にしたいと思っています。

昨日よりも今日、今日よりも明日が少しでもよくなっていくことを実感できる会社にしたい
と思っています。

それには、会社に集う全ての社員が一歩一歩成長していくことが不可欠です。

そして、全員の成長が会社に活力を与え、会社が成長してゆくと確信しています。