ウインナー弁当

「ウインナーが嫌いな人はいないのに、なぜないのだろう」

ローソンの林弘昭さんが感じた素朴な疑問が始まりでした。

林さんは好きなウインナーを好きなだけ食べられる弁当を作るために動き出しました。

開発部門に相談するも反応はよくありませんでした。

「弁当には顔が必要だがウインナーでは顔にならない」

「見た目のバランスが悪い」

「彩りがない」と散々でした。

しかし林さんは諦めませんでした。「ウインナー5本、200円、おいしい」の条件を満たすために奔走しました。

やっと予算に合う質のよいウインナーを探し出し、ついに6月末、ローソンストア100で「ウインナー弁当」(税抜200円) の発売にこぎつけたのでした。

すると大方の予想を裏切り、10月末までの4ヶ月間で50万食という爆発的な売上を記録したのです。

これは数万食でヒットと言われる同社ではあり得ない数字です。

そして11月10日に第2弾「ミートボール弁当」(税抜200円) を発売、ウインナー弁当の3倍の勢いで売れているそうです。

コンビニ弁当の常識を覆した林さんの執念が実を結びました。

 

マンホールのふたを探そう

8月上旬、東京都渋谷区の路上でマンホールのふたを探しては写真に撮る人々がいました。

「鉄とコンクリートの守り人」というゲームアプリで遊んでいる人たちです。

スマホの位置情報をもとにアプリの地図上に自分の現在地と周辺のマンホールが表示され、ほかのプレーヤーより先に現地に行ってマンホールのふたをスマホで撮影し画像を投稿すればポイントを獲得できるというゲームです。

このゲーム、実はマンホールのふたの維持管理に役立てるのが目的で、画像を検証し、傷んだふたの交換につなげるのです。

開発したのは老朽インフラの整備を目指すホールアースファウンデーションという会社でCEOの森山さんは語ります。

「環境を何とかしたいという思いに頼りすぎると無理がある。まずはゲームとして面白いからやるという状況を目指しています。」

渋谷区でのイベントには総額80万円の賞金をかけたところ、5日間の予定がたった3日間で区内約1万個の下水道マンホールふた全ての写真が集まりました。

マンホール業者も一般市民からタイムリーな情報を教えてもらえば無駄な工事をしなくてもいいし、早く健全化できると期待を寄せます。

遊ぶ人も業者もウインウインです。

ゲームの工夫は様々な分野に応用できそうです。

完全栄養食

日清食品ホールディングスの強みは創業家トップが前任者の仕事を踏襲しないことです。

2代目の安藤宏基社長は「カップヌードルをぶっつぶす」と宣言し、父で創業者の百福氏と言い争いました。

3代目の安藤徳隆副社長も2代目と言い争いを恐れていません。もちろん日清食品やカップヌードルの価値を高めていくというベクトルは同じということが大前提です。

カップヌードルも誕生から50年経ち、周りの社会情勢もガラリと変わりました。そんなカップヌードルが開発を進めているのが「罪悪感なきカップヌードル」です。

ジャンクフードなどを食べ過ぎると栄養のバランスを欠いたり、体重が増えたりして罪悪感を覚えてしまいます。逆に健康ばかりを気にしていても人生の楽しみが半減するのも事実です。

3代目の目指すのが「食欲に寄り添った健康食」すなわちインスタント食品を食べていれば大丈夫というフードビジネスモデルです。

これまでカップヌードルは食べ過ぎてはいけないと言われてきたが、今後は食べても食べても身体の健康を守るどころか、増進さえする理想のカップヌードルを作ろうというものです。

それを実現するために研究しているのが「完全栄養食」で、「見た目やおいしさはそのままに、カロリーや塩分、糖質、脂質などがコントロールされ必要な栄養素を全て満たす食」を意味します。

最終的に日清食品のインスタント食品を完全栄養食に切り替え、技術を外部にも提供するそうです。

インスタント食品が健康を維持、増進させる、そんな夢のような時代が生まれようとしています。

大阪芸術大学

大阪には大阪芸術大学というユニークな大学があります。

東京にある国立の東京芸術大学とよく比較されるのですが、大阪芸術大学は私立大学でとても自由な校風で有名です。エンターテイメント界に大阪芸大出身者は多く、アニメ監督の庵野秀明さんや漫才コンビのミルクボーイさんらを輩出しています。

その大阪芸術大学が先日、新校舎を建てました。その校舎がすごいのです。まるでヨーロッパの城そのもののような建物です。

非日常を感じる空間で学生たちに想像力や発想力を養ってもらおうと設計されたそうで、キャラクター造形学科の学科棟として使われるそうです。

キャラクター造形学科は日本を代表する演出家や監督を講師に「漫画」「アニメ」「ゲーム」「フィギュアアーツ」の4領域を学びます。

ユニークな外観の新校舎は映像や写真撮影の題材にもなり、学科を越えて教材などで活用していく予定だそうです。

漫画家の里中満智子学科長は「独創的な校舎の多い大阪芸大の中でも群を抜いて個性的な校舎。学生にはそれぞれの個性を磨き、夢を形にしてほしい」と語っています。

今後この校舎からインスピレーションを受けた学生たちが世界的に有名な作品を作るかも知れないと思うとワクワクします。

ショパンコンクール

伝統ある音楽コンクールがインターネット配信で変わりつつあります。

先日に最終結果が発表になった「第18回ショパン国際ピアノ・コンクール」は、時差があるにもかかわらず世界中から数万人がライブで鑑賞しました。

1927年に始まったショパン・コンクールは5年に1度の開催で、ハイレベルな競争が繰り広げられるので注目度はとても高いです。

新型コロナウイルス禍で生演奏を聴ける機会が減る中、今回の試みは最先端技術がお茶の間にいる音楽ファンの心をつかみました。

ネット上では「カメラワークや音質など最高で何度も見直して感動できた」などと上々の評価が多く、配信は記録的な関心を集めました。

今回のコンクールで2位に輝いた反田恭平さんが出場を決めたのも配信によって世界で知名度を高めたいという思いがあったそうです。

「僕がコンクールを受けた理由の1つは高音質、高画質の4Kでの配信があったからです」と反田さんは入賞が決まった後、報道陣に述べました。

主催団体は1次予選からファイナルまで動画配信サイト「ユーチューブ」やアプリでライブを無料配信しました。

演奏者の表情や指先をカメラが鮮明にとらえ、臨場感あふれる映像に多くの聴衆がくぎ付けになりました。

それに呼応するかのように世界各国からリアルタイムで感想が書き込まれました。

コロナ禍で生まれたコンクールの無料ライブ配信、これからのスタンダードになるかもしれません。

小学生の悩み相談、人気の秘密

小学生による悩み相談本「さよたんていのおなやみ相談室」がぴあから出版されました。ほのぼのとした内容と思いきや実に読み応えがあり、悩みに対する回答の切れ味が鋭いのです。

例えば「ツイッターと現実とでみんな人柄が違うので恐いです。どっちを信じればいいですか」(23歳) という相談に対して「どっちの人がらもうそです。あなたが思う人がらがほんとうです。」と心理学者のような回答をしています。

又、「楽しい人生にしたいです。どうすればいいですか」(21歳) の相談には「あなたしだいです」と一刀両断です。

大人にならないと経験しないような悩みにも答えています。

「結婚している人を好きになりました」(34歳) の相談に対して「好きになってもいいと思います。その人があなたを好きかどうかはまたべつの問題です。」

「僕は同性を恋愛対象と見ています。おかしいと思いますか」(19歳) に対しては「おかしくないです。みんな同じ人間です。」と回答。

現在11歳のさよちゃんは8歳のとき「探偵になりたい」との動機から母親の相談を解決しているうちにインスタグラムで相談コーナーを開設しました。たちまち評判となり、このたび本として出版することになったそうです。

本人は「自分の回答が面白いと言われるなんて正直驚いた」と言っています。

小学生が物事を真正面からとらえ、利害関係がなく経験が少ない故の遠慮のなさ、正しさが名回答につながっているのかもしれません。

サードプレイス

サードプレイス、直訳すると第3の場所。

自宅や会社以外の場所を指します。ストレスフルな社会では居酒屋やカフェなど自分なりにリラックスできるサードプレイスは大事な存在であると思います。

生きていれば誰にだって嫌なことはあります。その嫌なことを忘れ、疲れを癒やし明日への活力を与えてくれる場所でもあるのです。

英国では酒場をパブと呼びますが、正式にはパブリックハウス つまり公共の家ということです。地域社会のなかではなくてはならない存在です。

コロナ禍では時短営業や酒提供自粛で、サードプレイスとしての機能を十分に果たせなくなっていました。

だんだんと時短営業もなくなり平常通りの営業となっていますが、夜9時以降の時間帯では以前のようにお客さんは戻っていないようです。

そもそも出勤するということからリモートワークにシフトして自宅が職場となった人が多くなったのも一因のようです。

自宅が職場になると外出することがなくなり、息苦しく感じる人もいます。

また、自宅では仕事がはかどらないという理由で会社ではないサードプレイスで仕事をしたいという人もいます。個人ブースなどがそうです。

どんな時代になっても人間にはサードプレイスが必要なのかもしれません。

皆さんにとっての居心地のよいサードプレイスはどこですか?

豆腐バー

2020年 冬以降、あるコンビニの店頭に一風変わった食品が並んでいます。

「TOFU BAR」(豆腐バー) です。

サラダチキンバーのような形状で片手で食べられるのが特徴で、通常の豆腐に比べるとかなり硬めで食感もかなり違います。

ステイホームの追い風を受け、アサヒコ (さいたま市) の豆腐バーは累計800万本近く売れるヒットになっています。

誕生のきっかけは米国出張でした。

アサヒコのマーケティング部長が2018年に米国のスーパーの売り場を視察すると、豆腐が精肉などと同じようにたんぱく源として売られていました。

「豆腐はもっと自由に食べてもいい。チキンバーのような豆腐はできないか。」豆腐業界の経験が浅い分発想は柔軟でした。

豆腐は柔らかく作るのが常識でしたが、製造部門に「硬い豆腐を作ってほしい」と懇願し、「硬い豆腐」作りが始まりました。

2020年11月に豆腐バーが発売されると20~30代の消費者に刺さり、大ヒットになりました。

「〇〇とはこういうもの」という業界内の常識が市場を縮小させていることもあるのではないでしょうか。

消費者目線の柔らか頭で発想することが、今まさに求められているのだと思いました。

 

小林研一郎

「炎のマエストロ」と呼ばれる指揮者、小林研一郎。

81歳を迎え、ますます円熟味を増す小林研一郎の十八番とも言える作品スメタナ「我が祖国」を聞く機会がありました。

「我が祖国」はチェコ国民音楽の祖  スメタナの代表作で、現在も音楽史に輝く名曲です。

当時のチェコ (ボヘミア) はオーストリア帝国の支配下で民族復興運動が起こっていました。

第2曲「モルダウ」に象徴されるように祖国への郷愁や愛情が情感たっぷりと溢れ出てくる曲です。

それを一音一音に魂を込める小林研一郎、81歳とは思えぬ元気さと情熱的な指揮。

オーケストラと一体となったその響きは聴衆の胸を揺さぶりました。

チェコには行ったこともないのに、なぜかこの曲を聞くと懐かしい思いに駆られます。

そういえば同じチェコのドボルザークの「スラブ舞曲」を聞いても郷愁を感じます。

もしかしたら前世でチェコと関わりがあったのかも知れません。

機会があれば東欧を訪れてどんな気持ちになるのか確かめてみたいです。

 

植物男子

デパートの松屋 銀座店 (東京・中央) の5階紳士フロアに8月、一風変わった売り場がオープンしました。植物の「コケ」売場です。

カジュアル系紳士服売り場跡の40平方メートルに50種類のコケや関連商品が置いてあります。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークやステイホームの増加です。

それにしてもなぜコケなのでしょう?

コロナの影響で出勤は減り「働く男性」の象徴であるスーツの販売は低迷しました。自宅で働く時間が増える中、緑による癒やしがビジネスパーソンにとっては必要であると考え、お手入れが簡単なコケが最適ではないかと思い至ったそうです。発案者は女性社員です。

じわりと男性購入客が増えてきて、育て方やジオラマの作り方などのワークショップも考えているそうです。

別のデパートの高島屋 玉川店 (東京・世田谷) でも同じような現象が起きています。別館にある植物専門店「プロトリーフ」はコロナによる植物ブームにより3月、地下2階に新店をオープンさせました。

新店はサボテンなどの多肉植物や少し変わった植物を多数そろえたところ男性客が殺到。従来の女性客を上まわりました。

ステイホームの長期化で30代を中心とした単身男性が買っていくのだそうです。

コロナ下で着実に植物男子は育っています。