オルセー美術館展 2010

東京六本木にある国立新美術館で開催されている「オルセー美術館展2010」に
行ってきました。

感想は「すごい、すごすぎる・・・」でした。

そもそも、この絵画展が開かれたきっかけは、パリのオルセー美術館が1年半を
かけて改装工事をするので、普段では決してありえない名作中の名作を一挙に
貸し出し、「オルセー美術館展」が世界を駆けめぐるという千載一遇のチャンスに
めぐまれたことです。

それが今、日本に来ていて、世界的な名画の数々を日本にいながら楽しめるこ
とができるのです。

年間300万人が訪れるといわれるオルセー美術館の中でも最も人気が高いのが、
ポスト印象派の絵画です。

ゴッホ、モネ、ロートレック、セザンヌ、ゴーギャン、ルソーと絵画ファンならずとも
一度は聞いたことがある巨匠の大作が惜しげもなく展示されており、その時代を
独自の手法で表現している作品はどれも圧巻でありました。

なぜ、日本人が印象派の作品が好きなのかはわかりませんが、印象派の巨匠
たちが少なからず浮世絵に代表される日本文化に影響を受けていたことが、日
本人のノスタルジックな感情を想い起こさせているのかも知れません。

5月26日から8月16日までの会期ですので興味のある方は是非早めに行かれ
ることをおすすめします。

バタデン

バタデンとは島根県にある一畑電車の愛称です。

中井貴一主演の映画「RAILWAYS」で舞台となっているのが、島根県の
湖畔や田園地帯をゆっくりと走るバタデンです。

中井貴一演じる主人公がエリートサラリーマンを辞めて、突然バタデンの
運転士になるという内容ですが、都会の生活の中で失ってしまったものを
徐々にとり戻していく過程に共感をおぼえました。

実は、私たちの靴も松江にある一畑百貨店さんにお世話になり、たくさん売
っていただいております。その関係で私も松江に数回行ったことがあります。

ゆっくりと時間が流れているようなのどかな風景、特に夕日にそまる宍道湖
の美しさは息をのむほどです。

一畑百貨店の方がおっしゃっていました。

「都会の百貨店のマネはしない。地元密着でお客様に楽しんでもらえれば
それでいい。」

実際、百貨店の中を案内してもらった時にブランド自慢ではなく、ぬくもりの
ある木製のベンチを自慢されていました。「このベンチで地元の人に休んで
もらいたい。」そういう想いがヒシヒシと伝わってきました。

都会の生活に疲れたら、島根観光をおすすめします。

日本の失われつつある原風景がそこに残っていますので。

レナウンの選択

先日、中国の大手繊維メーカー山東如意が東証1部上場のレナウンを買収した
と新聞で報じられていました。

具体的には、レナウンが山東如意を引受先に約40億円の第三者割当増資を7
月末に実施し、資本・業務提携を結ぶというものです。山東如意が41%超の筆
頭株主となりレナウンは山東如意の傘下に入り、経営の立て直しを図るというも
のです。

最近のグローバルな動きからすると必然の流れかもしれませんが、私の率直な
感想は「あのレナウンが中国メーカーの傘下になるなんて・・・ おまけに40億円
とは安すぎる」といったものでした。

ここ数年、中国系企業による日本企業買収の動きは活発になってきていました。
しかし、東証1部上場企業の買収は初めてです。

レナウンの狙いは高い成長が見込まれる中国市場です。山東如意の持つ販売、
物流網を活用して市場を開拓し、需要の取り込みを図ります。

一方、山東如意はレナウンの品質や技術力、ブランド力に魅力を感じ、中国と
日本はもとよりアジア市場での事業拡大を視野に入れているでしょう。

両者の思惑は一致しているように思えます。しかし、売上高の7割以上がデパ
ート向けで占めていたレナウンが万策尽きて、中国の新興企業に買収されると
いう事実は、そのレナウンのビジネスモデルが今の時代には通用しなくなってき
ているという事を見せつけられている感じがします。

事実、この報道後、株式市場は好意的に受け止めレナウンの株価は上昇してい
ます。

女性のズボン着用は厳禁?

女性のズボン着用は厳禁という法律がフランスに存在するそうです。18世
紀に制定された法律が今も残っていることがわかり、左翼政党が廃止を求
めているそうです。もちろん法律はあっても運用はしていないのですが、ファ
ッションの聖地フランスでの事なので興味深い話です。

法案が制定されたのは、フランス革命直後の1799年「健康上の理由以外」
での女性のズボン着用を禁じ、その後の改正で「乗馬などの際に限って」の
着用が認められたそうです。

当時、馬に乗る時に適しているとされたズボンがファッションアイテムとして
注目されたのは比較的最近で、50年ほど前からだそうです。その後のパン
ツルックの浸透は世界の女性のファッションを見れば火をみるよりも明らか
だと思います。

そう思うとファッションというのは時代や社会の変化によって大きく変貌して
きているのがわかります。

女性の社会進出が進むにつれ、より機能的なパンツスーツ等が求められて
きたのはその典型的な例でしょう。

しかし、先日「男性のスカート着用が流行」というニュースを目にしました。

これが今後の社会の変化につながるのか、一種の嗜好なのかは20年後
の判断を待ちたいと思います。

イタ車

先日、バスに乗っていると前の座席の若者の会話が聞こえてきました。

「うわっ!イタ車や!」と窓際の男子。

「ほんまや!」と返す通路側の男子。

その目線の先には私が想像していた車とは大違いの車がありました。

恥ずかしながら私が想像したのは「イタリアの車」で「イタメシ」(イタリア料理)
「イタカジ」(イタリアンカジュアル) の延長線上での発想でありました。

実際に目に飛び込んできたのは、美少女系のアニメキャラクターを全面に装
飾した車でした。

帰って調べてみると「イタ車」ではなく「痛車」で装飾のモチーフが「痛々しい」
のが痛車の基準であるらしいです。

2000年のはじめからオタク文化が世間一般に広く知れわたるようになり、キャ
ラクターを全面に装飾した「痛々しい」車が現れはじめたそうです。一部の人た
ちの間でブームとなっているようです。

モータースポーツの世界では様々なキャラクターを配した「レーシング痛車」が
活躍しているそうです。

ちなみに同様の改造をしたバイクは「痛単車(いたんしゃ)」と呼ばれ、自転車
は「痛チャリ(いたチャリ)」と呼ばれるそうですが、残念ながらまだ見たことが
ありません。

バウリンガルボイス

バウリンガルとは2002年にタカラが発売した犬の鳴き声を通訳する機械です。
当時、大ヒット商品となりノーベル賞のパロディ版であるイグノーベル平和賞を
とったほどバカバカしい商品として話題になりました。

そのバウリンガルが機能をアップして発売されたのが「バウリンガルボイス」で
す。犬の気持ちがよくわかる犬語翻訳機というキャッチコピーについ気持ちが
ゆらいでしまいました。

これがあれば我が家の「チョコ」(トイプードル、オス)ともう少しわかりあえるので
はないかと思ってしまい、ついつい買ってしまいました。

商品としてはかなりレベルアップしていて対応犬種50種、音の専門家による
動物感情分析システムを応用した音響分析による解析という説明に自然と期
待がふくらんでいきました。

そしていざ犬種をセットして装着し、第一声を待ちました。

「・・・・」

鳴かない・・・。

室内で飼っているため鳴かないようにしつけをしていたのが裏目に出ました。

「チョコ!ほら鳴いてみ!」といっても鳴きません。

あれこれと格闘すること10分、しつこい飼い主に根負けしたかのように鳴きま
した。

「ワン ワン」

おお!ついに鳴いた!何と言っているのだろう!

翻訳機はもったいつけるように解析中と表示しています。そして次の瞬間、次
のような文字が出てきました。

「ボク、ここにいるよ!」

恐るべし バウリンガルボイス。

グローバル化するデフレの先は・・・

先日、東京銀座に「フォーエバー21」がオープンして約1,000人もの人が
行列を作ったそうです。

これで銀座にはスペインの「ZARA」 スウェーデンの「H&M」という世界
のファストファッションの雄に新参の「フォーエバー21」が参入した構図に
なり、ユニクロを含めた戦いは興味深いものとなるでしょう。

特長はそれぞれ若干違いますが「フォーエバー21」のブランド名には、着
る人の誰もが21歳に見えるようにという願いが込められているそうです。
更に「フォーエバー21」の商品は概ね「made in U.S.A」という事が他社と
は違うところです。

しかし、多くのファストファッションが人件費の安い国に生産拠点をシフト
しているのが現状です。アジアでは中国からベトナム、バングラディシュ
へとシフトしています。

それらの国ではどのような変化が起きているのでしょう。

中間所得層の育った中国は今後、消費地として注目されるでしょう。

ベトナムやバングラディシュでは工場で働く人が増え、安定的な収入を
得るでしょう。その後は中間所得層が育ち、消費地の役割を担うでしょ
う。

そして工場はより安い人件費の国を求めて、そこで中間所得層を育成し
ていくことになるでしょう。

グローバル化するデフレの先に貧困の解消と富の普遍化があるのなら
未来は明るいのですが・・・。

長谷川等伯という人生

先日、京都国立博物館で開催されている「長谷川等伯展」に行ってきました。

長谷川等伯が登場した時代は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と権力者が次々と
変わっていく激動の時代でありました。その中で地方から出てきた絵師が才能と人
脈を使い、どんどん出世していく様は痛快なジャパニーズドリームであったと思いま
す。

当時は狩野派とよばれるスーパーエリート集団が牛耳っておりました。中でも等伯と
4歳年下の狩野永徳は、若い頃からそのずば抜けた才能とグループの力で天才の
名をほしいままにしておりました。

等伯は33歳の時に一大決心をして絵師として大成するために地元の能登から京都に
移住してきました。しかしその後17年間はどこでどのように修行していたのかは不明
とされています。そして51歳の時に千利休のすすめで大徳寺三門の壁画を描き、一
躍狩野派を脅かす存在になったのです。

その翌年、御所対屋の障壁画制作をめぐり狩野永徳一門と対立し、狩野派の政治力
の前に排除させられてしまいます。しかしその1ヶ月後、狩野永徳が急死するのです。
遅咲き等伯の時代がやってきます。

豊臣秀吉の命をうけて祥雲寺障壁画に着手、長男 久蔵とともにすばらしい障壁画を
完成させて、大絶賛を受けました。長谷川派の時代が到来したと誰もが思ったことで
しょう。

しかし翌年、長谷川派の次世代リーダーの長男 久蔵が急死してしまうのです。享年
26歳、あまりにも若い天才絵師の死でした。

長谷川等伯はたぐいまれなる才能を持ち合わせて順調に出世していく人生でありまし
たが、一方で妻や子供に先立たれるという悲哀に満ちた一面もありました。

「仏涅槃図」や国宝「松林図屏風」等は、元々信仰心の厚い等伯が先立った親族への
鎮魂歌ような想いで描いたのではないかと思います。

等伯の死後、長谷川派は表舞台には出てこないのですが、狩野永徳の再来といわれ
た狩野探幽や江戸中期の円山応挙が等伯の画風に影響を受けたと言われています。

等伯の活躍した時代は一瞬でありましたが、新しい技法にチャレンジする姿勢と造形
的特質はその後の絵画史に長く足跡を残したといえるでしょう。

ブランドブックが完成しました。

このたびブランドブックという冊子を作りました。これはサロンドグレー
というブランドがどのような考えで靴を作り、お客様にとってどのような
靴でありたいか、社会にとってどのような企業でありたいかをまとめた
ものです。

実は3年程前にもブランドブックを作りましたが、時代の変化に合わせ
て私たちもいろいろと変化してきましたので、このたびリニューアル版
を作ることにしました。

内容は企業メッセージ、私のインタビュー記事(緊張しました・・・)、製造
工程、お客様のインタビュー記事、環境・社会への取り組み、直営店の
ご案内です。

作っていく過程の中で、漠然とした思いが確固たる思いになっていきま
した。

それは日々思っていることを言うだけでなく、印刷物にして配るというこ
との責任の重大さを身にしみたからであると思います。

私たちの思いがうまく伝わってくれれば、これほどうれしいことはありま
せん。

もし、興味があればこのホームページのお問い合わせより御請求くださ
い。又、感想等も書いていただければうれしく思います。

成熟社会へ

日本の消費力が落ちて百貨店を中心とした小売業の不振が騒がれている中、意
外なニュースを目にしました。

英国の美術専門誌「アート・ニューズペーパー」4月号が2009年に開かれた展覧
会の入場者数の順位を載せ、1日あたりの入場者数で日本がトップ4を占めたと
いうのです。

その内訳は、第1位 東京国立博物館「国宝 阿修羅展」(1日平均 15,960人)、第2
位 奈良国立博物館「正倉院展」(同 14,965人)、第3位 東京国立博物館「皇室の
名宝展」(同 9,473人)、第4位 国立西洋美術館「ルーブル美術館展」(同 9,267人)
です。

このニュースのすごいところは、パリ、ニューヨーク、ロンドン等の名だたる美術館
を押しのけて日本がトップ4を独占したというところです。そして前述の同誌は「日
本人の展覧会愛好熱は不況知らず」と書いてあります。

私も先月に京都国立博物館で開かれていた「ハプスブルグ展」に行って来ましたが、
すごい人で入場するまで90分待ちました。来ている人たちも若いカップルからお年
寄りまで様々で、肩をはらずに鑑賞している様子は文化的なものが自然と人々の
生活の一部になっていると感じました。

日本社会は確実に「モノ」から「コト」へと価値観が変化し、成熟した社会へと変貌
を遂げようとしているような気がします。

もうすぐ東京で約29万人の入場者を記録した「長谷川等伯展」が京都国立博物館
にやってきます。

作品も興味深いですが、無名の絵師から千利休に見いだされ、当時全盛を極めて
いた狩野永徳率いるスーパー絵師グループ「狩野派」の最大のライバルにのぼりつ
めていく長谷川等伯の人生は、日本史の教科書ではわからない深みがあるのでは
ないかと思っています。

会期が4月10日から5月9日までと短いので混雑覚悟で行ってきたいと思います。