成熟社会へ

日本の消費力が落ちて百貨店を中心とした小売業の不振が騒がれている中、意
外なニュースを目にしました。

英国の美術専門誌「アート・ニューズペーパー」4月号が2009年に開かれた展覧
会の入場者数の順位を載せ、1日あたりの入場者数で日本がトップ4を占めたと
いうのです。

その内訳は、第1位 東京国立博物館「国宝 阿修羅展」(1日平均 15,960人)、第2
位 奈良国立博物館「正倉院展」(同 14,965人)、第3位 東京国立博物館「皇室の
名宝展」(同 9,473人)、第4位 国立西洋美術館「ルーブル美術館展」(同 9,267人)
です。

このニュースのすごいところは、パリ、ニューヨーク、ロンドン等の名だたる美術館
を押しのけて日本がトップ4を独占したというところです。そして前述の同誌は「日
本人の展覧会愛好熱は不況知らず」と書いてあります。

私も先月に京都国立博物館で開かれていた「ハプスブルグ展」に行って来ましたが、
すごい人で入場するまで90分待ちました。来ている人たちも若いカップルからお年
寄りまで様々で、肩をはらずに鑑賞している様子は文化的なものが自然と人々の
生活の一部になっていると感じました。

日本社会は確実に「モノ」から「コト」へと価値観が変化し、成熟した社会へと変貌
を遂げようとしているような気がします。

もうすぐ東京で約29万人の入場者を記録した「長谷川等伯展」が京都国立博物館
にやってきます。

作品も興味深いですが、無名の絵師から千利休に見いだされ、当時全盛を極めて
いた狩野永徳率いるスーパー絵師グループ「狩野派」の最大のライバルにのぼりつ
めていく長谷川等伯の人生は、日本史の教科書ではわからない深みがあるのでは
ないかと思っています。

会期が4月10日から5月9日までと短いので混雑覚悟で行ってきたいと思います。