情報通だが思考力ゼロ

「あっそれ知ってる。○○でしょ」
やたらといろいろな情報に精通し、話に入ってくる人がいます。
話題が豊富かなと思いきや、それほど話が盛り上がらない。
じっくりと観察してみると、通りいっぺんの情報だけで中身がない。
恐らく、ネットニュース等の上っ面の情報をいち早く大量に集める能力に長けているのだ
と思います。
それに対しての自分の意見もないし、側面からの考察もない。
その必要性さえも感じていないのかも知れません。
物事には多面性があり、一方からの意見では信ぴょう性に欠ける場合があります。
起因している原因の妥当性、登場人物の背景、性格、感情の揺れ動き等を考え、共感で
きる部分があるのか、ないのかを整理して、はじめて自分の意見が生まれるのだと思い
ます。
一人一人の意見が違って当然であると考えますが、思考さえもしない人は話をしていても
くだらないです。
人間は思考することに価値があると思います。

「大阪都構想」がもたらしたもの

「大阪都構想」とは、大阪市を廃止して5つの特別区の新設を柱とした構想です。
5月17日に大阪市民を対象とした、前代未聞の大規模な住民投票が開かれ、反対70万
5585票、賛成 69万4844票とわずか1万票の僅差で否決されました。
投票率も67%で、3分の2の市民が投票した一大関心事でした。
選挙当日まで賛成、反対の陣営が声をからしてアピールしていました。
私を含めた大阪市民の人たちは、大いに悩んだと思います。
なぜなら、両陣営の話を聞けば聞くほど両極端だからです。
大阪都になると「無駄を省ける部分」と「新たな負担」があるわけなのですが、両陣営の試
算があまりに違うのです。
データというものは、抽出の仕方、加工の仕方によって見え方が大きく変わります。
あくまでも結論(賛成もしくは反対)にもっていくための試算にすぎないのです。
正直どちらを信じたらいいのかわからないけれど、棄権はしたくないという市民感情の表
れがこのような僅差での決着になったのではないかと思います。
選挙前、選挙後でも大阪都構想の話はよく話題にのぼり、政治論議が活発になったこと
は間違いありません。
私たちの住んでいる街には、こんな問題があったのかと気づかせてくれたのは橋下徹市
長だと思います。
長いものには巻かれろ式で、無関心だった大阪の人たちを考える市民、疑問を抱く市民
に育てたことが最大の成果ではないかと考えます。

教えてもらっていない

「その事はわかりません。教えてもらっていないので・・・」
最近の若い人は当然のように言います。
周りの人はア然となり、心の中で叫びます。
「そんな事は常識で、教えてもらうものではない」 と。
このような光景はあまりに日常茶飯事で、驚くことも少なくなりましたが、最近腰が抜ける
くらい驚くべき話を聞きました。
偏差値の高い東京の某有名私立大学の教授が言っていました。
「信じられない事だが、学生の7割は70年前の戦争の事を知らない。詳しい内容ではなく、
どこの国の戦いで、どこの国が勝ったのかを知らない」
理由は「教えてもらっていないので」
事実、近現代史は受験には出題されないので、高校の授業ではほとんど教えないのだそ
うです。
反面、某芸術系の大学では、ほとんどの学生が戦争の事を知っているらしいのです。
それは映画、小説、漫画等を通じて学んだそうです。
教えてもらっていないけれど、自らの興味分野の中で学んでいったのです。
今年は戦後70年、近隣諸国の間で歴史観の違いが注目されています。
マスコミの過熱さの割に、若い人たちの無関心さが目立つ感じがする本当の理由は、「何
の事か全然わからない」からではないかと思います。

火花

お笑い芸人 ピース又吉さんのベストセラー小説「火花」を読みました。
なぜこの作品が「文学界」を史上初の大増刷に導いたのかと興味を持っていたのです
が、読んでみて深いナゾが解けたような気がしました。
人見知りの芸人・徳永と天才肌の芸人・神谷の友情物語であるのですが、売れない芸
人達の空気感や無力感が実によく感じられました。
筆者のていねいな文章、細部にわたる鋭い観察眼、心理描写の繊細さには驚くべきも
のがあり、私の頭の中で描写されている情景がリアルに再現されていました。
この人は、文章の天才だと思います。
又吉さんによると、登場人物に特定のモデルはなく、複数の芸人仲間を参考にしたそ
うです。
もちろん自伝小説でもないそうです。
映画化の話も早々に出ているそうですが、読者の世界観と映像のギャップを生むので
はないかと心配しています。
キャスト選定も悩むところです。
ヒットを狙う商業主義に走るのか、小説の世界観を忠実に再現するのか、注目していき
たいです。

ユーズド・イン・ジャパン

訪日外国人が日本に来て最も驚くことの一つに、街にゴミが落ちていなくてキレイという
のがあります。
日本人には子供の頃から掃除の習慣があります。
ほとんどの学校で、全員もしくは掃除当番の人が教室や廊下を掃除します。
実は世界的には珍しいことのようです。
自らが掃除をしなければいけないので、できるだけゴミを落とさず、きれいに使おうと無
意識のうちにしているのだと思います。
海外では学校清掃の業者が担当しているケースが多く、きれいに使おうという意識が
働かないかもしれません。
その習慣からか、日本人は「物を粗末に扱わず、大切に使う」という意識が根付いてい
るような気がします。
世界で高評価を受けているメイド・イン・ジャパンとともに、日本の中古品ユーズド・イン・
ジャパンも非常に人気が高いのだそうです。
中古車はもとより、オフィス家具や衣類、鉄道車両まで海を渡り、新たな活躍の場を得
ています。
新品ほど高価格ではなく、中古でも十分使える品質であることが人気の理由です。
日本人の気質が生み出した究極のエコサイクル。
今後は様々な分野に広がっていくような気がします。

コインロッカーの悲劇

先日、東京ビックサイトで行われていた展示会に行ってきました。
大きな展示会に行った時は、できるだけ多くのモノをみるために荷物を最小限にして、身
軽で回るようにしています。
私のような人が多いのか、コインロッカーは充実しています。
しかしながら、スーツケースを入れられる大きめのコインロッカーは競争率は高いのです。
運よく、近くにピッタシサイズのコインロッカーをみつけ、預けることにしました。
「よし、携帯と名刺も持ったし、これで大丈夫だな」と心でつぶやき500円を投入し、鍵をか
けました。
その瞬間、「あっ、招待券持ってない・・・コインロッカーに入れてしまった」と気づいたので
す。
ロッカーの前で苦悶すること約1分。
受付で名刺を渡して、招待券を再発行してもらおうと会場の方へ向かいました。
「そういえば、ロッカーの中に入れたのは、会場内でラウンジが使えるVIP招待券だった
な・・・。そもそも受付に時間がかかったら嫌だな・・・」と歩きながら苦悶すること約4分。
やっぱり引き返してロッカーを開けようと決心し、5分前に入れたばかりのコインロッカー
を泣きながら開けました。
VIP招待券を取り出し、もう二度とこんな過ちはしないと心に誓い、500円を投入し、再施
錠しました。
すると、前のベンチで座っていたおじさんと目が合いました。その表情は憐れみに満ちて
いました。
そうです・・・ 私の5分間のコインロッカーの悲劇を見ていたのです。
そのおじさんの憐れみと小さなエールを背中に感じながら、足早に会場へ向かいました。

人生の達人

先日、東京でタクシーに乗った時の話です。
たまたま乗ったタクシーの運転手さんが、かなりのご高齢であったので大丈夫かなと少し
心配していました。 
しかしながら、予想に反して運転はなめらかで、道にも詳しそうだったので安心しました。
顔の色ツヤもよく、元気そうです。
興味があったので話しかけてみました。
「失礼ですけど、おいくつですか?」  
「今年で81才になります」
ちょっとビックリです。
81才のタクシー運転手さんははじめてです。
聞けば、週4回の午後の数時間のみの勤務で、あとの日は畑仕事に精を出して野菜を作
っているそうです。
その作った野菜も、自分が食べるほかは友人、知人におすそ分けしているそうです。
戦後、いろいろな職を転々としながら、日本の高度成長期に一生懸命に働いてきたそうで
す。
食糧のありがたさも、労働の喜びも知っている81才のその運転手さんは、とても充実した
毎日を送っているように見えました。
社会と自然とのつながりを絶妙のバランスでとっている生き様は、人生の達人のように思
えました。

鳥貴族の極意

先日、TVで鳥貴族の大倉忠司社長が出演していました。
外食産業が低迷している中で、鳥貴族は好調を維持し、昨年にはジャスダックに上場致し
ました。
優しくて温和そうな社長は25歳で独立し、大きな夢を当時から語っていたそうです。
鳥貴族の成功の秘訣は、商売の王道に通じるものがたくさんあると感じました。
  一、メニューは全品280円 (税抜) でわかりやすい
  二、国産鶏肉100%で品質にこだわっている
  三、ランチ営業はせず、焼鳥の串打ちを各店舗で行っている
  四、タレは本社工場でまとめて生産している
  五、炭火を使わず自社開発の電気グリラ―で焼く
チェーン店でありながら品質にこだわり抜き、鮮度と味を一定に保つ工夫が随所にあふれ、
低価格を実現しています。
宣伝はしなくても、安さと味に納得したお客さんはリピーターになっていきます。
関ジャニ∞の大倉忠義くんの父親でもある大倉忠司社長。
子育てにおいてもムダ使いはさせず、お金の大切さを教えていたそうです。
研究熱心で、謙虚なその姿に更なる成長の予感がしました。

京都市交響楽団

NHKの 「SWITCH インタビュー達人達」 というTV番組に出演していた、広上淳一さんとい
うオーケストラ指揮者に興味がわきました。
運よく、広上さんが指揮する京都市交響楽団の演奏を聴く機会がありました。
チケットは完売、会場は満席です。
広上さんが登場します。
予想通りに小柄で、かわいらしい愛嬌のあるおじさんです。
指揮はダイナミックで、時には跳ねたり全身で指揮をしている感じで、とてもパッションを感
じました。
それに呼応するかのように、楽団員の方たちも一糸乱れぬ調和のとれた旋律を奏でていま
した。
特に、ラヴェルのボレロは個々の独奏パートの能力を最大限に生かし、最後は迫力のある
合奏を見事にまとめ上げる広上さんの引き出す能力に脱帽致しました。
最後に、広上さんがうれしい報告をされました。
日本の洋楽発展に顕著な業績をあげた個人又は団体に贈られる 「サントリー音楽賞」 に
広上さんと京都市交響楽団が選ばれたそうです。
とても名誉なことです。
広上淳一さんが常任指揮者として、京都市交響楽団の能力をいかんなく発揮させていると
ころをみると、オーケストラの指揮者は会社の経営に通じるところがあると感じました。

私たちの進むべき道

靴屋のツボというブログを始めたのは、6年前の2009年4月でした。
はじめのうちは、ここまで続くとは思ってもいなく、その時々の想いをつづっているうちに今
回で300回目を迎えることができました。
昔のブログを読み返してみると記憶がよみがえり、時に納得したり、時に恥ずかしくなった
りといろいろです。
6年前というと、それほど昔ではないように感じますが、靴業界をとりまく状況は変化が著し
かったです。
6年前の統計では、靴の国内生産量と輸入量の差があまりなかったのですが、最近の統計
によると国内に流通している革靴は約6000万足で、そのうち4000万足が輸入靴だそうです。
国内生産量(2000万足)の2倍となっています。
輸入靴の原産国TOP5 はカンボジア、バングラディシュ、中国、ミャンマー、ベトナムで全体
の75%以上を占めています。 
輸入靴は年々増加しており、国内生産靴は年々減少しています。
このまま国内生産が減少し続ければ、メーカーの廃業、職人さんの転職となり、国内靴生
産業の存続の危機になってしまいます。
私は非常に大きな危機感を持っています。
そのようなことにならないためにも靴製造の技術を若い人たちに伝承し、日本の靴作りの
文化を守っていきたいと考えています。