同じ思い

先日新聞に、あるアパレルの新興ブランドの思いが載っていました。

「夢はいつか国内に工場を作ること」

その理由は二つです。

一つめは、日本製の良さを伝えたい。

二つめは、海外への人材流出による日本の技術低下を防ぎたい。

この会社のように多くのアパレルブランドは海外生産をしています。

コストやロット等の問題で海外生産を選択したけれども、人件費増等でメリットが少なく
なっている苦悩が垣間見えます。

靴の業界でも同じような現象が起きています。

弊社は日本製のハンドメイドという選択をしています。

その理由は上記と同じ思いです。

日本製の良さを伝え、日本の技術を継承、発展していき、一人でも多くの雇用を産み出
したいということに尽きます。

これほど海外生産が進んでしまった今では、すぐに国内回帰というわけにはいきません
が、少しでも多くの企業が国内に工場を作り、雇用を創出し、メイドインジャパンの良さを
アピールできればと思っています。

場違いな二人

先日、旧友のK氏から久しぶりに電話があり、ディナーの無料チケットがあるので行かな
いかという誘いをうけました。

有効期限が5月末日までなので、お互いのスケジュールの合う日を設定し、行くことにな
りました。

場所は神戸の北野、中庭の美しいおしゃれなレストラン。

周りのお客さんは全てカップルで、男二人は完全に浮いています。

その時、昔のある光景がフラッシュバックしました。

かれこれ二十数年前の事です。

そのK氏からボトルキープの期限がもうすぐ切れるので、飲みに行かないかと誘われまし
た。

場所は梅田の高層ビルのレストランパブ(この言い方も古い)

予約なしで行ってみると、席は空いているがメニューは二人用のスペシャルディナーセット
のみしかやってないという。

ボトルキープしたお酒を飲むのが目的だったので、仕方なくそれをオーダーしました。

それが間違いの始まりでした。

店内はいつもより暗く、各テーブルにキャンドルの灯りがともっています。

周りのお客さんは全てカップルで、男二人は完全に浮いていました。

その日は2月14日、バレンタインデーナイトだったのです。

運ばれてくる料理は「二人のために」ハートや星形をふんだんに使ったロマンティックな料
理の数々。

完全にアウェーな私達に衝撃の一言が・・・

「今日の二人を記念して、ポラロイドフォトサービスをしています」

ぎこちない男二人の笑顔が写真におさめられました。

そんな日に入った私達が悪いのか、店のマニュアルすぎる対応が悪いのか、わかりませ
んが若い日の思い出の1コマです。

今後、K氏からの誘いは居酒屋にしようと心に決めました。

私が靴を愛するワケ

靴と女性の魅惑の関係に迫る世界初のドキュメンタリー映画が日本で上映されています。

そのタイトルはズバリ 「私が靴を愛するワケ」

この作品は、50センチ以上もの高さがあったルネサンス期の靴から、今日のピンヒールま
での歴史を追いながら靴を通じて女性と靴の歴史をひも解いていく内容です。

見どころは、セレブやシューズデザイナー達が語る靴の魅力。

その一片をご紹介しましょう。

「靴を見れば、今の私の気分が分かるわ」

「靴は私というものを表現するのに欠かせないものよ」

「ピンヒールをはいた瞬間、人は女になるんです」

垣間見えてくるのは、女性たちの美しくなりたい、強くなりたい、新しい自分になりたいと
いう一途な思いです。

フランスのヴォーグ誌の読者の8割は靴中毒者で、小型車1台分ぐらいのお金を靴につぎ
込んでいるそうです。

なぜ女性たちは靴に欲望と感情を刺激されるのでしょうか?

そのヒントがこの映画にあるような気がします。

靴好きには必見の映画です。

盆栽という小宇宙

先日、盆栽展に行く機会がありました。

そこには、数々の盆栽展で受賞した盆栽が一堂に展示されておりました。

所有者が丹精込めて手入れした銘木の数々をみていると、心が洗われるようでした。

盆栽というと松を思い起こしますが、松以外にも花の咲く梅や桜、実のなるカリン、サクラ
ンボ、雑木のケヤキ、モミジ等、様々な種類があります。

盆栽の魅力は、野外でみられる大木の姿を鉢の上に縮尺して再現することにより、小宇
宙を作り出すことだと思います。
 
実際によくみてみると、木をそのまま小さくしたミニチュア版のようなもので、とてもかわい
いです。

自分でも育ててみようと思い、近くの盆栽専門店に行きました。

たくさんの中から、心引かれる一つの盆栽がありました。

マツの仲間の糸魚川シンパクという種類で、高さが20cm以下の小品盆栽です。

でもこんなに小さくても樹齢20年以上で、盆栽の世界では若い方です。

立派な盆栽は100年以上経っているものも多く、400年というものもありました。

そのような盆栽は一人で育てられないので、引き継がれて育てられているということになり
ます。

盆栽愛好家であった三代将軍 徳川家光の盆栽が宮内庁で育てられているという話は、歴
史の重みを感じざるを得ません。

人間より長い時間を生きる盆栽。

世界中の人々を魅了する理由が少しわかった気がします。

「所有」から「シェア」へ

「所有」することがステータスであったバブル世代。

「シェア」することに抵抗のない若い世代。

上記2つの世代が消費市場の主役を交代する時にどのような変化が起きるのか、誰も想
像しえないのではないかと思います。

アイテム別に少しづつ変化が起きているようです。

高級ブランド品のレンタルサービスは、20代~30代の若い女性に人気が高いそうです。

パーティドレスを中心にバッグや靴、アクセサリーなどのアイテムを取り揃えているレンタ
ルサービスは、セットで約1万円前後の料金設定だそうです。

結婚式などにお呼ばれする機会が多いけれど、高級ブランド品を何点も購入することはた
めらわれる層に需要は高いような気がします。

車にも「シェア」の流れがあるそうです。

かつては車を所有することが男のロマンの象徴であったのですが、今の若い世代にとって
維持費が高い割に利用機会が少ないので、コストパフォーマンスの悪いアイテムと映って
いるのかも知れません。

必要な時だけ利用できればいいという若者の考えに呼応するように、カーシェアリングとい
うビジネスが増えているようです。

利用者の満足度も高く、コンビニのように近くにカーシェアリングがあるかどうかを引越し先
の重要なポイントとして考える人も多いようです。

「所有」から「シェア」に完全にシフトしていくかどうかはわかりませんが、メーカー側は好意
的にこの流れをみています。

「シェア」というトライアルで使っていただくことにより、購買につながるとみているようです。

レンタルビデオが浸透していったように、シェアビジネスがどのようなアイテムで開花してい
くのか注目していきたいです。

職人さんの引退

先日、弊社の底付職人さんが引退しました。

弊社に勤めて20年以上、職人歴は60年以上という大ベテランで、年齢は80歳を超えてい
たと思います。

その人はそんな高齢とは思えないほどに元気でハツラツとしていて、ゴルフやカラオケを
趣味に、まさに人生を楽しんでいるといった感じの人でした。

職人としての腕も確かで、後輩の面倒見もよく、人として尊敬できる部分がたくさんありま
した。

その職人さんが4月末日で引退したいという申し出がありました。

私たちにとっては突然のようであっても、その職人さんにとってはいずれ引退の日が来る
と覚悟をしていて、それがたまたまその日であったのかも知れません。

職人の世界はサラリーマンのように定年がある世界ではないので、自分の身体が動く限
り、自分の腕が通用する限り働くことが可能です。

現実に職人さんが引退されるのは、身体を壊して働けなくなってしまうことが大半です。

今回のように余力を残して、自ら決めた日まできっちりと勤め上げて、スパッと引退すると
いうことは非常にまれなケースです。

その職人さんのいない職場をみて心に誓いました。

残してくれた功績に恥じないよう、私たちは技術を継承し、切磋琢磨していかなければい
けないと。

狩野山楽・山雪

先日、京都国立博物館で開催されている「狩野山楽・山雪展」に行ってきました。

「京都の狩野派は濃い。」というキャッチフレーズで宣伝されていたので興味がわいてい
ました。

京都国立博物館は絵の説明書き(キャプションというそうです)が面白いので、大変人気
があります。

それほど絵に興味がなくても、そのキャプションで説明している時代背景、人物描写、作
者の思い等を想像し、絵をぼんやりとながめているだけでその時代にタイムスリップした
ような気がします。

山楽・山雪の生きた時代は桃山から江戸への過渡期。

豊臣か徳川か、どちらを支持するかで後の人生が大きく変わる激動の時代でした。

元々、武士の子であった山楽は豊臣秀吉に見いだされ、当時の秀吉の絵師 狩野永徳に
入門しています。

その後、永徳と共に織田信長、豊臣秀吉に仕え、永徳の死後、狩野派を支える立場とな
っていきます。

しかし、秀吉の死後、徳川家の時代になると豊臣残党狩りの標的となり、命を狙われてし
まいます。

その時に公家の九条幸家と徳川二代将軍 秀忠の助命活動により、九死に一生を得たそ
うです。

時代を生き延びた狩野派は、永徳の直系筋の江戸狩野派と門人筋である山楽・山雪の
京狩野派に分かれ、それぞれが独自の画風を確立していきます。

江戸狩野派の墨の濃淡を使い分け詩情豊かな画風に対し、京狩野派は秀吉が愛した豪
壮華麗な画風です。

関東と関西の好みの違いは、この時期に確立されたのではないかと思います。

カジュアル化の本質

ライフスタイルのカジュアル化が進んでいると言われます。

ファッションがカジュアル化されて、ヒールの高い靴はあまり売れなくなりました。

靴のトレンドもローファー、ドライビング、バレエとカジュアル化に呼応しています。

カジュアルの対極はエレガントですが、なぜカジュアル化が進んでいるかということを少
し深く考えてみたいと思います。

バブル期のブランド信仰から自分らしさの表現へと移行していったのではないかと思い
ます。

他人の目よりも自分らしさという価値観。

快適さを求めるあまり、家の中で着る服とおでかけ着との差がなくなり、リラックスした日
常的な普段着でほとんどの時間を過ごしてしまう人が多くなったのではないでしょうか?

おしゃれをして外出することは大変です。

しかし、そこには非日常があり、異空間にいる自分がいます。

それを面倒くさいと言うのなら、刺激のない人生になってしまいます。

もっとおしゃれをして人生を楽しむという選択肢が見直されればいいなと思っています。

大人の女の寿司選び

先日、寿司屋に行って何から食べるかという話題で盛り上がりました。

いろいろと聞いてみると個性があっておもしろいです。

寿司屋といっても回転寿司から高級寿司までありますが、地域によってネタが違うのも寿
司屋の特長でしょう。

しかし、何から食べて何で締めるというのは、ある程度決めている人が多いので興味深い
です。 

ちなみに私は、カンパチから攻めて、エビ、中トロ、イカ、穴子、平目、ウニといって、玉子で
締めるというパターンで、自分なりにあっさりとこってりを交互に食べるというルールを決め
ています。

シマアジやコハダがあれば思わず食べてしまいます。

サーモン、玉子、マグロを集中的に食べる人もいて、子供みたいだと周りから言われてい
ました。

その時、大人の女性が言いました。

「私は赤貝から食べて、赤貝で締める」

「な、なんと・・・赤貝ですか・・・」

私は少し貝類が苦手で、鳥貝かホタテ(貝柱)ぐらいしか食べないのでとても意外でした。

しかし次の日、たまたまみていたテレビ番組で女優さんが言ってました。

「寿司ネタで好きなのは赤貝!」

その日以来、寿司屋で赤貝を注文する人に注目しています。

東京営業所移転オープン

株式会社クレッセントの東京営業所が4月2日(火)に移転オープン致しました。

以前はホテルオークラ東京内で事務所を借りていたのですが、お客様を迎えるには不便
で手狭なため、靴の本場 浅草へ移転しました。

場所は地下鉄銀座線 田原町駅から徒歩1分という好立地です。

ショールームも併設しておりますので展示会はもちろん、会期以外でも商品を見ていただ
くことが可能となりました。

早速、4月17日から19日まで秋冬物の展示会を開催致します。

今回のコレクションは弊社の特長である素材の上質感、日本製ハンドメイドの安心感を十
分に感じてもらえるような商品が出来上がりましたので、是非みていただきたいと思って
います。

東京営業所は新しいスタッフも増え、ますます飛躍していきたいと思っております。

移転オープンに際しまして御協力いただいた皆さん、お祝いの品を送っていただいた皆さ
んに心から感謝致します。

ありがとうございました。