売らない店

丸井グループが店舗を「売らない店」に転換しようとしています。

ダイレクト・トゥ・コンシューマー (D2C) と呼ばれるネット通販企業を次々と誘致し、丸井の従業員が運営を受託します。店舗はショールームに徹して、商品はそこでは一切売りません。

商品を気に入られたお客様にはネットで購入することをすすめますが、店員は商品の評価や不満を聞き出し、商品開発に生かすためのデータを収集するという役割がメインです。

IT技術との融合で一工夫して精度を高めているのが特長です。天井に据え付けた人工知能 (AI) カメラが来店客の行動を追い、商品の前に5秒以上滞在した人の数、スタッフが商品デモを行った回数、デモから販売に至った割合などを記録して今までの店舗より緻密なデータを集めることができます。そのデータを出品企業に還元して商品開発に役立てるというのです。

以前はテナントの売上高に連動して家賃収入も上がるという図式でしたが、この方式では売上高を測れません。ではどこで稼ぐのかというと、グループのクレジットカード「エポスカード」です。

会員数は15年3月期の591万人から20年3月期は720万人を超え、百貨店最大手である三越伊勢丹の「エムアイカード」の倍以上の会員数です。

エポスカード会員向けの優待セールやポイントアップイベントによりD2Cのネット通販での売上高が増えればカードの決済手数料という形で丸井の収益が上がる仕組みです。

未来型の店舗では売上高は評価の物差しにならないのです。