カウンター1番さんのゆううつ

先日、出張先で昼食を食べた時のことです。

おいしそうなお寿司屋さんがリーズナブルな値段でランチを提供していたので、そこにしま
した。

店内は混雑していましたが、遅めのランチであったのでほとんどのお客さんが食べ終えよ
うとしていました。

カウンターの一番はしに案内され目の前で腕のよさそうなすし職人が黙々とすしを握って
いました。

無駄のない動きと流れるような手さばきは、思わず見とれてしまうほどでした。

「まったく何をやっているんだ・・・」

一瞬、耳を疑いましたがそのすし職人がボヤいていました。聞こえているのは前にいる私
だけでした。すし職人は要領の悪い店の店員に怒っているようでした。

「テーブル2番さん、すし定二丁です」店員がカウンター内に向かってオーダーを言いました。

「何を言っているんだかわからねえよ・・・」目の前のすし職人はブツブツ言っています。

その店員に怒っているのがすぐにわかりました。

ほどなくして私のすしが出来上がり、目の前のすし職人が私に手渡してくれました。

「カウンター1番さん(私のことです)すし上がったのでお吸物お願い」とすし職人は店員に
言いました。

「今やってます」とその店員が奥で答えました。

「今やってますじゃねぇだろ。早くしないと食べ終っちゃうぞ」少し語気を強めて店内に響きわ
たるように言いました。気まずい空気が私の周りにただよいました。

すし職人の怒りがピークにならないように、できるだけゆっくりと食べました。

3分の1ぐらい食べたところでお吸物が来ました。

店員は私に「お待たせして申し訳ありません」と言ったあとにすし職人に向かって言いました。

「すみませんでした・・・」

「・・・・」すし職人は無視しました。

気まずさはMAXになりました。

その後、食べるスピードを上げそそくさと店を後にしました。

客の入り具合、店のたたずまい、すし職人の仕事ぶりをみると名店であるのは間違いなさそ
うです。しかし、その店に欠けていたのはお客様に快適に過ごしてもらうための心配りではな
いかと思うのです。

おいしいものを提供すればそれでいいのではなく、そこに付随するサービスが重要だと思いま
す。

私たちも商品の品質だけではなく接客サービス、アフターフォローまで含めたトータルな顧客
満足が大切であると痛感したカウンター1番の席でした。