家の近くにうどん職人の店があります。
比較的新しい店ですが街の名店となっています。
全国的にそばやラーメンは打ち方やスープにこだわった名店が各所にあり、
職人技の世界を形成しているような気がします。
同じ麺の仲間でも、うどんは職人の世界ではなくて、気軽に食べれるイメー
ジではないでしょうか?
この店はそのイメージの真逆をいく、うどん道を極めた職人の店なのです。
店主は無口で、もくもくとうどんを作っています。その気迫はカウンター越し
にひしひしと伝わってきます。
その気迫が店の雰囲気を支配しているのか、満席なのにお客さんは静か
です。
ひとつひとつ丁寧に作るので時間がかかります。そのためにテーブルには
パズルや知恵の輪が置いてあり、ほとんどのお客さんは無言でそれらを楽
しんでいます。
「遅い」とか「早くして」というお客さんは一人もいません。
天ぷらが揚がるのと同時にうどんがゆで上がり、すばやく盛り付けされます。
店主が低い声で「おまちどうさま」といい、天ぷらうどんをお客さんの前へ置き
ます。
店内が静かなのでその全ての音や声が舞台をみているようにお客さんに聞
こえるのです。
心地よい緊張感のあるこの店で、背すじがピンとしたうどん職人のうどんを
食べることが最近とても好きです。
その店のはし袋のうらに店主の素直な想いがかいてあったので記しておき
ます。
―「うどん」の美味しさ、素晴らしさをお客様へ!―
職人魂はこうあらねばならないと思いました。