不思議な世界

先日、知人が出演するというのでコンテンポラリーダンスの舞台に行って
きました。

渡された地図をたよりに行くと大きな通りから1つ辻を入ったところの小
劇場にたどりつきました。

「えっ、こんな所に」という軽い驚きを覚えながら中に入ると、30人も座れ
ば満員になりそうな予想外に小さい舞台でした。

開演時間が近づくと司会らしき優しそうな男性が、ボソボソとささやくよ
うに観客に語りかけはじめました。

「コンテンポラリーダンスをはじめてみられる方は、少しやさしい気持ちで
みて下さい。」

「?」

「ダンサーのパフォーマンスにどんな意味があるのだろうかということは
深く考えない方がいいと思います。」

「??」

「意味がある時もあるし、意味のない時もあるのですから・・・  」

「???」

「世の中には意味がわからないままほっといていいことも、あっていい
のはないでしょうか」 

「?????・・・」

「それではスタートします」

心の準備も心がまえも何もできていない状態でパフォーマンスがはじまり
ました。

音楽と照明にあわせてダンサーが踊り出します。時には激しく、時には
ゆっくりと走り出したり、寝そべってみたり、小道具もとびだします。国旗
やボール、靴、仮面それらを使って踊っています。うまいのかへたなのか
それさえもわからない。

とっさに入口で渡されたパンフレットに目をやると「空気のとらえ方」という
タイトルがかいてあります。よけいに混乱してしまいました。

そして全てのパフォーマンスが終り、なぜか出演者と観客のトークコーナー
が始まりました。

なぜトークをする必要があるのか「?」でしたが司会の言葉を思い出し強引
に納得しました。

とても不思議な世界でしたが、なぜか退屈とは思わず、次に何が起こるか
予想もつかないのでおもしろかったです。

後日、知人に会ってどうだったか聞いてみました。

「一応シナリオはあったけど半分以上はアドリブだったから・・・」

もう何があっても驚かないと心に決めました。